遺跡編 来訪
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徒歩で行かねばならないとは……別に旅の経験があるから特に苦ではないのだが、少し思う所がある。クリアカンに次元航行艦用の空港はあるくせに、電車や飛行機などの地上移動用の交通手段を用意していないのが色々妙だ。まるで選民思想の権化のような……流石に考えすぎか?
「………む?」
少し思考にふけっていると、俺の眼が街中で見覚えのある人影を見つけた。さっきと違って今度はわざと見えるような位置で、こちらを見つめている白い少女。俺が気付いた事で、彼女はまたしても背を向けて走り出した。が、その速度は緩慢なもので、しかも途中振り返ってこちらの様子を伺っている事から、まるで『追いかけて来い』と示しているようだった。
……いいだろう、その誘いに乗ってやろう。
「それで地図によると、アクーナまでは崖や絶壁などの危険地帯を避けて回り込む必要があるから結構時間がかかる……って、どこに行くんですかサバタさん!?」
「すまん、少し気になる奴がいてな。追わせてもらう」
「兄様!? お、お待ちください〜!?」
『サバタ様が追いかけるなら、私も行くよ』
「え、皆も!? あ〜もう、僕もついて行くから置いていかないで〜!」
なんかユーノ達もあわてて追いかけてきた。もし罠だとしたら皆を巻き込まずに俺一人で対処したかったのだが……一応あの少女からは敵意を一切感じないから多分大丈夫か。
「この方向は……街の外? それも目的地アクーナに行く方みたいだ」
「兄様はこの世界の地理を知らないはずなのに、どうして方向がわかるんだろう?」
『サバタ様なら何でもアリ』
「もはや崇拝に近いね、マキナのそれは……」
「とはいえ、兄様が成し遂げてきた事を鑑みれば十分納得できるけどね」
後ろからそんな会話が聞こえる中、少女を追い続ける俺達はやがて街の外に繰り出した。たびたび振り返ってはこちらの位置を確認しながら、少女はそのまま荒野を突き進んでいく。しかしどういうわけか、途中からアクーナへ続くはずのルートからそれていきだした。
「あの……この先は崖だから道が無いって、確かクリアカンで管理局支部の人達が注意していましたよ? 大丈夫なんですか、サバタさん?」
「さあな。どういうつもりかは後で確かめるさ」
心配そうな表情でこれから向かう場所に一抹の不安を抱くユーノ。しばらくすると俺達は彼の言う通りに崖の手前へ差し掛かった。崖とは言うが眼下の光景は中々見応えのあるもので、無数の色鮮やかな結晶で構成された大地に空から降る青い光が反射して、まるで宝石を散りばめた絵画のような世界が広がっていた。はっきり言わせてもらうが、これは名物になっても良いレベルだと思う。しかしアレもレアメタルの一種だとしたら、採掘し続けたらいつか無くなるのだろうか…
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