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オズのベッツイ
第十幕その三
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「どうなるんでしょうか」
「雨雲が少し出て来て」
 そうなって、とです。アンはお話します。
「そしてすぐにね」
「お空が曇って」
「それで降るの」
「本当にすぐに曇ってすぐに降るんですね」
「それがオズの国の雨の降り方なの」
「本当に降るのはすぐなんですね」
「焦らすことはしないの」
 お天気の立場からです、アンは微笑んでお話しました。
「一気に来るから」
「何時降るのかとは思わなくて済むんですね」
「ええ、けれどね」
「それでもですね」
「一気に来るから」
 待つことはなく、です。オズの雨は。
「そのことには気をつけてね」
「わかりました」
「さあ、行くわよ」
 最初に気付いた猫が皆にこう言ってきました。
「雨が降るまではね」
「歩けばいいのね」
「降るってわかっていても降るずっと前から動きを止めることはね」
「することはしないと」
「そう、そうしないとね」
「距離も縮まらないし」
「それで雨が止んだら」
 そうなればともです、猫は雨の先のことも言いました。
「そうしたらね」
「また歩いて」
「雨が降ってもそれは一時の休息なのよ」
「ずっと降らない雨はないから」
「あんた達の世界のことは知らないけれどオズの国の雨はすぐに止むから」
 だから余計にというのです。
「休む位ね」
「そういうことなのね」
「だからね」
 それで、とです。猫はガラスのお髭をピンと張ってついでに胸も張って気取った仕草で明るい声で言いました。
「雨が降るまで。どんどん歩いていきましょう」
「そうね、行けるまではね」
 ベッツイは猫のその言葉ににこりと笑って応えました。
「歩きましょう」
「そういうことよ」
 猫はベッツイに応えてです、そのうえで。
 一行の先頭に立って道を進みました、そして二時間程歩いていますと。
 急にお空に暗い雲が出て来てです、その雲が。
 瞬く間にお空を覆ってきました、ベッツイはその雲を見てです。
 皆にです、右手の少し前にあった森を指差して言いました。
「あそこに行きましょう」
「あの森の木の下に入って」
「そして、ですね」
「ええ、雨をやり過ごしましょう」 
 もうすぐ降るその雨をというのです。
「そうしましょう」
「はい、わかりました」
「それじゃあ」
「今なら間に合うから」
 だから余計にというのです。
「行くわよ」
「そうしましょう」
 アンが応えてです、そうして。
 一行はその黄色い森の中に入りました、その中の一際大きな木の下に来たところで、です。雨がぽつぽつと来て。
 一気に降りました、ナターシャはその雨を木の下から見ながら言いました。雨は森の外を凄い勢いで降っていて音さえしています。
「本当にすぐに降ってきましたね」

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