暁 〜小説投稿サイト〜
貴方の背中に、I LOVE YOU(前編)
貴方の背中に、I LOVE YOU  (前編)
[4/27]

[1] [9] 最後 最初
った。ようやく一人の部下と繋がり、礼服を借りる事の、承諾を得た。翌朝、部下が礼服を持参した。義衛門の小柄に対し、その部下は、大柄だった。ズボンは、義衛門自身の礼服で間に合ったが、上着は、部下の物を着るしか、術がなかった。義衛門は、その礼服を着てみたが、丸で、子供に大人の服を着せた様で、漫画チックな姿だった。朝子とタキは、思わず噴き出した。翌日、朝子は和服で正装したが、義衛門は仕方なく、部下の礼服を着て入学式に赴いた。入学式では、皆の視線が義衛門に集まった。帰りの車の中で朝子は、改めて義衛門を見て、笑いを堪える事が出来なかったが、義衛門は終始、不機嫌だった。一方、静は入学式の余韻に慕っていた。義衛門とって、最悪の一日であった。数日後、人望が有る義衛門に、小学校の校長より、PTA会長就任の要請が有り、義衛門も受け入れた。
静が小学校の通い始めると毎日、黒君と白ちゃんは、起床時に吠え、静の顔を舐めて、お越した。登校時には静を、小学校の校門まで静を送って行き、下校時には校門で待っていた。そいて、静と一緒に帰宅するのが、黒君と白ちゃんの日課になった。ある日、路上で初老の男性が、静に道を尋ねた。黒君と白ちゃんは、その男性を威嚇し追い払った。丸で二匹は、静のボデーガードの様だった。
静が小学生に成ったのを期に、田村家の弁当は二つになった。義衛門の弁当は一般的な物だったが、静の弁当は毎日キャラ弁(創作弁当)で手間が掛かった。当時の弁当は、日の丸弁当にオカズが主流で、キャラ弁は全く見掛けなかった。でも、それは、目に入れても痛くない静への、朝子とタキが作った愛情弁当であった。
学級の席順は、五十音で決められた。田村静の隣には、同じタ行の、武井澄子(たけいすみこ)と言う、女の子が座った。彼女の背丈は静と同じだが、色は浅黒で、痩せ細っていた。
何時もの様に、昼食時間の鐘が鳴った。静はキャラ弁を開いた。隣の澄子の弁当が、目に入った。それは、白い握飯一つとタクワン二本の粗末な物だった。澄子は美味しそうにゆっくり食べ、食べ終わったら自らの弁当箱を綺麗に舐め干していた。数日後、静は、昼食時間に澄子が、居なくなる日が有る事に、気付いた。静は澄子を探した。澄子は校庭の水飲み場で、水を飲んでいた。それは、水で空腹を癒している様だった。手には、学校の兎小屋から持ち出した一本の菜っ葉が残っていた。しかも菜っ葉には、澄子が齧った跡が有った。静が「どうしたの?」聞くと、「今日は、安ちゃんがお弁当を持って行く日だから、私にはお弁当が無いの」と澄子は答えた。静の目に、涙が光った。静は急ぎ、教室に戻り、自らのキャラ弁を持って来た。「澄ちゃん、これ、食べていいよ」と言い、キャラ弁差し出した。澄子は「本当!本当!本当に!」確認するかの様に静に聞いた。静は首を縦に振った。キャラ弁など食べるのは、澄子にとって
[1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ