貴方の背中に、I LOVE YOU (前編)
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た。静の体は見る間に、痩せ細っていった。
黒川商店の仕事が無くなってから、二か月経ったある日、静が土蔵の中で急に倒れた。最近、静は常に咳をする様に成っていた。平は慌てて駆け出し、以前、静と一緒に行った事がある、町医者に飛び込んだ。何度も何度も、平は助けを懇願した。町医者は面倒臭げに、診察客を終えたら、往診する事を承諾した。急ぎ、平は土蔵に戻って、静を見た。静は目を閉じた状態であった。静は、幼い頃の義衛門家族・犬達・武井兄妹の事や、結婚式で正義と踊った事を、思い出していた。静の目に光る物が有った。平が、極度に衰弱していく静が心配で、静の顔を数回撫でた。瞼が、静かに開いた。静は平らに、自分の傍で横になる様に、言った。胸元から三通の手紙を取り出した。静は囁く様に、話始めた。「これは、お父さんと、フィリピンの人からと、サトさんからの手紙です。写真も入っています。戸棚に手記が有ります。我が家の宝物です。全て、平に上げます。大切にして下さい。貴方が大人なったら、フィリピンに行って、お父さんと会って下さい」と、言って、手紙を渡した。静は脇に寝た平の頭や顔を、自分に記憶させるかの様に、撫で続けた。静は、自分の首から蛍のペンダントを外し、平の首に掛けた。「貴方のお嫁さんに、このペンダントを、掛けて上げて下さい。平が大好きです、平が大好き・・・・」静の瞼が、引き潮の様に閉じた。撫で続けていた手も、止まった。静の目から、一筋の涙が流れ落ちていた。平の幼い目には、涙が溢れていた。表で黄子の、悲しい遠吠えの声がした。静と平の、悲しく寂しい永遠の別れであった。
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