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貴方の背中に、I LOVE YOU(前編)
貴方の背中に、I LOVE YOU  (前編)
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が有れば、蛍を見ていくと、良いと思います。綺麗ですよ」と、言って、若住職は寺の本堂へ、戻って行った。静は、平らに蛍を見せようと、納骨を夏場に決めていた。夕闇が近づいた。数十人の人が、境内に集まり始めた。次第に蛍が光始めた。辺りが闇に包まれると、光の数は圧倒されるまでに、膨れ上がって居た。平は目を丸くして、光を見ていた。その光の中に、実母・義衛門夫婦・田村家の犬達・武井夫婦も居るのだ、と思って、静は平らに教えた。その夜は、近くの宿屋に泊まった。翌朝、二人は宿で朝食を取り、駅に向かった。昔、静が立ち寄った駅前の万屋が、静の目に入った。静は万屋で、ジャムパンとクリームパンと牛乳を二つずつ買って、二人は列車に乗り込んだ。それは、静の懐かしい思い出で有った。
昭和27年の桜が満開の頃、平は静と一緒に、思い出の小学校の門を潜った。愛犬、黄子も同行した。それは、静が幼年時代に通った小学校であった。工面して揃えた、学生服やランドセルを、身に着けた平を見ると、安堵感を覚え、平を誇らしく感じた。校庭の演壇で校長が挨拶に立ち、次にPTA会長が演壇に立った。静は、自らの入学式の義衛門を思い出し、俯いて笑っていた。沢山の新入生の中に、良枝と哲也の姿が見えた。例の如く、成金主義のケバケバシイ衣装に、身を包んで居た。静は、良枝に見付からない為に、良枝から距離を置いた。その甲斐も無く、良枝と視線が合ってしまった。良枝は静に近寄り、自分の衣装や持ち物を自慢し始めた。それは、豚に真珠だった。暫くして、急に良枝は喋るのを止め、静の衣服を、疑わしげに見入って居た。何処かで、成金仲間の良枝を呼ぶ声が、聞こえた。振返り、良枝は声が聞こえる方へ、小走りで去って行った。入学式の翌朝、良枝が突然、静達の土蔵に押入って来た。大変な剣幕で有った。静が、入学式に着用した衣服は、武志が良枝に買い、良枝が気に入らないで、一度も袖を通していない服だった。武志が、その衣服を持出し、静に与えたのだ。静は、その衣服が良枝の服だった事など、全く武志から聞いて無かった。静は金銭的に余裕無いので、仕方なく武志から貰った衣服を入学式に着た。結果、武志の浮気が露呈した。良枝は静に罵り(ののしり)暴言を浴びせ、殴る蹴るの、凄まじい勢いで有った。良枝は、静が入学式に着て行った衣服を引き裂き、静に解雇を告げ、泣きじゃくりながら、帰って行った。以後、武志も静の土蔵には現れなく成り、静の収入源は完全に閉ざされた。蓄えは次第に底を来たし、静は手に覚えの有る、和服の仕立てや書道教室の看板を、敷地の前に立てたが、殆ど収入は得られなかった。静は、自らの食べ物を平らと黄子に与え、自分だけは、水で過ごす日々が多く成った。平も次第に、学校には行かなく成り、土蔵で過ごして居た。黄子は昼間、土蔵から居なくなり、町中のゴミ箱を漁り、夕方、土蔵に帰って来る様に成っ
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