暁 〜小説投稿サイト〜
貴方の背中に、I LOVE YOU(前編)
貴方の背中に、I LOVE YOU  (前編)
[3/27]

[1] [9] 最後 最初
、間を置いたが、飼う事を了承した。静は飛び上がって喜び、義衛門に抱き付いた。義衛門は以前から自らの屋敷が大き過ぎるので、子供が寄り付かなく、増して、この町には幼稚園も無いので、静に友達が出来ない事を感じ取っていた。義衛門の静への想いの現れだった。子犬は雄犬で黒君(くろくん)と静が名付けた。一二か月したある日、今度はクリーム色をした子犬(雑種犬)を抱いて静が帰って来た。「黒君、一人では可哀相だから、黒君のお嫁さん連れて来た。名前は白ちゃん(しろちゃん)」だと言い、又しても飼う事を懇願した。偶々、その日は、義衛門が休日を取っていた。静の主張に負け、義衛門は飼う事を約束した。幼い静は、白ちゃんの性別が判らなかったが、義衛門には判別が付いた。白ちゃんは雌犬で、黒君のお嫁さんの資格が有ると、静に教えた。暫くして、静が白ちゃんを抱いて、義衛門の部屋に入って来て言った。「黒君のお嫁さんに、お化粧して上げたの。口紅綺麗でしょ」義衛門が見ると、白ちゃんの口の周りには、赤いクレヨンが塗って有った。その顔は、丸で子犬のピエロだった。義衛門は大笑いして「綺麗だね」と言った。
子犬を飼うのを境に、今まで田村夫婦と添い寝をしていた静は、田村夫婦とは別に、子犬と一緒に寝る様になった。しかし、寂しくなると、田村夫婦やタキの布団に、潜り込んで来た。同時に子犬二匹も、潜り込んで来て、布団の中は、満員御礼で大変だった。
桜が満開。いよいよ明日は静の入学式。朝子とタキは嬉しさと不安感で翻弄され、ただ忙しく動いていた。田村夫婦の寝室の引き戸が、音を立てず静かに開いた。入って来たのは、黒君と白ちゃんだった。部屋には、明日の入学式に着る義衛門の礼服が、上半身のマネキンに、掛かっていた。黒君と白ちゃんは暫く唸り、マネキン目掛けて飛び掛かった。怪しい人間と、間違えた様だ。二匹は礼服に噛み付いた。礼服には大きな穴が、二か所、開いてしまった。静が、田村夫婦の寝室での物音に気付き、入ってきた。静は礼服を見て、唖然とした。急ぎ、自分の部屋から色紙と糊を持って来た。色紙の中から、黒色と紺色を取り出し、礼服の穴に糊で貼り付け、再度、マネキンに礼服を着せた。朝子とタキは台所で忙しく動いていたので、この出来事には全く気付かなかった。夕方、義衛門が車で会社から帰ってきた。いつもの様に着替えの為、朝子と一緒に、自分達の寝室に入った。二人はマネキンを見て仰天した。尽かさず静を呼んだ。静が、黒君と白ちゃんを連れて入って来た。「御免なさい・御免なさい」と二度言い、二匹も(あご)を床に着け、うな垂れていた。すぐに、朝子は、市内の貸衣装屋に電話したが、既に閉店時間を過ぎていたので、何処とも繋がらなかった。次に義衛門は朝子に、会社の部下に電話する様、指示した。当時、電話は未だ普及しておらず、部下の間でも電話を所有している者は、少なか
[1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ