6部分:第六章
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第六章
「ですが」
「ですが?」
「アラビアからの香が手に入りましたね」
「あれですか」
「そう、あれです」
笑みの邪なものがさらに深まってきていた。
「そのうえであれを執り行いましょう」
「わかりました。それでは」
「用意はできていますね?」
「無論」
「それはもう既に」
神父達もまた邪な言葉で述べるのだった。
「できておりますので」
「では今宵」
「はい、今宵に」
最早邪なものに満ちた顔になっている顔で応える法皇であった。
「また」
「今宵はあの方々も来られるのですね」
「勿論です」
また応える法皇であった。
「呼んでありますね」
「はい、それもまた」
「招待状を」
「ならばいいです。それでは」
これでここでの話を終えた。そしてその夜。バチカンの礼拝堂において様々な者達が集まっていた。十字架にかけられている主の前に枢機卿や司教、各国の大使や貴族達が集まっている。中にはローマに古くからいる家の名門の子弟達さえいる。その彼等を前にして法皇は言うのであった。
「今宵は楽しむのです」
「今日もまたですね」
「主はそれを望んでおられます」
その主を前にしての言葉である。
「ですから」
「はい、それでは」
「そのように」
「さあ、はじめましょう」
早速部屋の中を妖しい煙が立ちこめる。既に礼拝堂の中には他では出ないような、胡椒さえふんだんに使われた馳走に美酒が出されている。皆煙の中でそれを味わいだした。
「今日は何か余計に」
「この煙のせいでしょうか」
「この煙こそ神の御力なのです」
こううそぶく法皇であった。
「人の心をより見せるものなのです」
「人の心を」
「そう。だからこそ」
この言葉を合図とするかのように部屋の左右の扉から裸の美女達が姿を現わしてきた。そうしてそこにいる者達に淫らな笑みを浮かべ抱きつくのであった。
「今こそ。主の前でこの世の悦びを讃えましょうぞ」
「はい、それでは」
「我々も」
皆その自分達に抱きついてきた美女をそれぞれ押し倒しその場で快楽に溺れた。そして法皇もまた。神に仕える誰もがこの狂気の宴を貪るのであった。
この時代の教会の腐敗は現代までも伝わりその呆れ果てた様子を伝えている。この時の法皇ロドリード三世はその謀略や卑劣さで有名であり当時の腐敗の象徴とさえ言われている。その好色さと貪欲さもあまりにも有名であり今もなお良識ある聖職者達から反面教師とされている。法皇になるに至るまでの悪辣な謀略も歴史に残っている。だがそれでいて当時はローマの民衆に至るまで人気の高い法皇であった。その理由もまたわかっているが当時はそれが法皇になるまでは当然でありなってからも当然のことであったのだった。時代が時代とはいえ悪徳を極めた彼が生前は人気
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