逃亡生活
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落ちて落ちて最初に見えたのは、大きなマンゲツだった。
黒い宙(そら)に一つ浮かぶマンゲツ。
壮大な眺めで、あまりにも大きいから手を伸ばしてみるものの届かなかった。
そのまま落ちて今度は、ニンゲンに出会った。
どうやら姿が見えているらしく、オニだ化物だと騒ぎ立てて殺しに来た。
手で腹を貫いたら簡単に絶命した。
悲鳴をあげたニンゲンもいれば、ちょっと驚いた顔をして再度殺しに来たニンゲンもいた。
殺しに来たニンゲンはみんな絶命したけど。
何故だかニンゲンの絶叫は心地良かった。
ただ、上に居た時と同じキョウフだとかゾウオだとかの眼をしていたからここにいちゃいけないんだって思って逃げた。
逃げて逃げて、次に辿り着いたのは山の中だった。
森の中には獣が沢山いた。
何を悟ってか懐かれた。
特に鴉なんかは、屍体のある戦場跡や廃れた村に連れて行ってくれた。
食べ物に困ることはなかったし、寒くもなかった。
ツキが何十回か上がったあるとき、獣たちは山を去ると言った。
どうやらここもニンゲンに荒らされるらしい、もうすぐニンゲンの戦が始まるーーーと。
獣たちが去った後、山を下った。
ただ単に、多くの気配と足音がしたから。
下ってみると数え切れないくらいのニンゲンが何かを装備して戦っていた。
中には火まで使う者もいた。
獣たちが帰る所が無くなると困るので、その場にいたニンゲンをザンサツした。
中には立ち向かってくる者も多くのいたが、弱かった。
いろんなところを転々と移動して、殺しに来たニンゲンは殺して物を剥ぎ取る生活を何千と繰り返した。
血に塗れた体や服は川の水で洗い流す。
そんな事を続けて、いつしか見えない何かに惹かれるように移動した。
辿り着いたのは何とも言えない色をした穴。
不思議と危険な感じはなく、一方的な道のような穴。
感じた事のない感情を殺しながら、その穴の中に入った。
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