暁 〜小説投稿サイト〜
友の救い方
第四章

[8]前話
「君はそうしかねないからな」
「ははは、そう思ったからか」
「私も必死になった」
 それで、だったのだ。
「こうして沼地から出た」
「必死になればだ」
「自分自身でか」
「死地も脱することが出来る」
「君はそのことを考えてか」
「君に照準を当てたのだ」
 まさにそうしたというのだ。
「そして狙い通りになったな」
「そういうことか」
「うむ、君が助かって何よりだ」
「私に死を見せてか」
「死から抜け出させたのだ」
「そういうことだな」
「狙い通りになって何よりだ」
 ビスマルクは微笑み友人に告げた。
「では戻りその冷えた身体を風呂で温めよう」
「そうしようか、確かに冷えた」
 沼の水でだ、実際彼は全身泥だらけだ。沼地から出てもそこにいた証ははっきりとしている。
「狩りは止めよう」
「また次の機会だ。しかし」
「しかし。どうしたのだ」
「君は私が必死に動けば助かるとわかっていたな」
「如何にも」
その通りだとだ、ビスマルクは友人に微笑んで答えた。
「だからこそああしたのだ」
「では無理だと思えばどうしていた」
 友人はその目でビスマルクの目を見据えて問うた。
「撃っていたか」
「これだけの人数がいるのだ」
 ビスマルクは従者達を見回して友人に答えた。
「それに私にも力がある」
「寝不足で体調が悪いのではないのか」
「それでもこの体格なら充分だ」
 先程の言葉と違い、というのだ。
「君一人なら何とかなる」
「君一人でもか」
「そうだった」
「そういうことか」
「何とでも出来た、しかしだ」
 それでもというのだ。
「まずはだ」
「自分で何とかしてからか」
「神は自身で動く者を助けられる」
 ここでこうも言ったビスマルクだった。
「そういうことだ」
「厳しいな、随分」
「そう言うのだな」
「君らしいと言えばらしいが」
「しかし君は助かった」
 ビスマルクは友人にこのことも話した。
「だからよしとすべきだ」
「そう言うのか」
「そうだ、いいだろう」
 こう言ってだ、そしてだった。
 ビスマルクは命を拾った友人の肩に自分の上着をかけてだ、そのうえで。
 彼を連れて帰った、そのうえで彼を風呂に入れて温めさせた。それでこの話は終わった。鉄血宰相ビスマルクの彼らしい救い話として歴史に残っている逸話の一つである。


友の救い方   完


                        2014・11・16
[8]前話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ