第三章
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「それでは」
「私は友人として君に出来ることは一つしかない」
「ではその一つは何だ」
「これだ」
こう言ってだ、ビスマルクは。
その腰から拳銃を出した、そして。
その拳銃を友人の額に向けてだ、こう言ったのだった。
「君を苦しませないことだけだ」
「まさか」
「そのまさかだ、一撃で終わらせる」
友人に照準を当てたままの言葉だ。
「苦しむことはない」
「旦那様、それは」
「幾ら何でも」
後ろからだ、ビスマルクの従者達が慌てて言って来た。
「非情です」
「あまりにもかと」
「ご友人を撃たれることは」
「幾ら何でも」
「静かにしているのだ」
ビスマルクはその彼等に顔を向けて重厚な口調で告げた。
「ここは私に任せろと言ったな」
「し、しかし」
「それでもです」
「そなた達が案ずることはない」
冷静そのものの声でだ、ビスマルクは彼の従者達に告げた。
「見ていればいい」
「何でしたら縄を持って来ます」
「そして馬を」
「それで引っ張りましょう」
「そのうえで」
友人の従者達も言って来た、だが。
ビスマルクはやはり冷静にだ、こう彼等に言った。
「それでは間に合わない、だからだ」
「その拳銃で」
「旦那様を」
「そうだ、また言うが私に任せるのだ」
この場はというのだ。
「いいな」
「そうですか」
「どうしても」
「全ては私が責任を持つ」
他ならぬビスマルク自身がというのだ。
「だからいいな」
「わかりました」
「では」
相手はビスマルクだ、その地位以上に人間としての威圧感が凄まじい。それで従者達は頷くしかなかった。その威圧感に押されて。
それでここは彼に任せた、ビスマルクは友人に再び向かってだった。
そのうえでだ、彼jの額に照準を合わせなおして告げた。
「では覚悟はいいな」
「ま、待ってくれ」
友人は必死の形相でビスマルクに言った。
「ここはだ」
「どうするというのだ」
「何とかする」
「自分でか」
「そうだ、自分で這い上がる」
こう言ってだ、実際にだった。
友人は必死にあがきだした、そのうえで。
沼の中を泳ぎ、這いずる様にして。そうして何とか岸辺まで来てそこから何とかだった。
沼から這い上がった、そして肩で息をしつつ沼地から出たそのままの姿勢である四つん這いのままビスマルクに言った。
「助かったぞ、私は」
「そうだな」
「君に撃たれなくて済んだぞ」
「やれば出来るのだ」
ここでだ、ビスマルクは笑って友人に言った。
「この通りな」
「?どういうことだ」
「君は死にたくなかったな」
「君に撃ち殺されたくなかった」
友人はきっとした顔でビスマルクを見上げて返した。
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