第六章
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「是非ね」
「よし、もう食材は買ってあるからさ」
「後はお家に帰って」
「早速作るな」
「私も一緒に」
「ああ、それはいいよ」
花姫も料理上手だがだ、虞姫は笑ってそれはいいとした。
「だって花姫が無事に帰って来たお祝いだぜ」
「だからなのね」
「ああ、花姫は手伝わなくていいよ」
「じゃあ姉さんが」
「あたしが一人で作るよ」
そn広東料理をというのだ。
「もう仕込みはしてあるからな」
「後は作って」
「すぐに食えるぜ」
そうなるというのだ。
「だから食おうな」
「ええ、けれどね」
「けれど？」
「まだ解散になってないから」
修学旅行のそれが、というのだ。
「私も早く皆のところに行ってね」
「それでか」
「そう、先生に解散って言われてから」
それからというのだ。
「お家にね」
「一緒に帰るんだな」
「そうだったな、解散って言われないとな」
「そうだよ」
ここでだ、中年のスーツの髪の毛がそろそろ薄くなってきた痩せた男が虞姫のところに来てこう彼女に言った。
「今は大人しくしてくれるか」
「あっ、王先生」
「久しぶりだな、李君」
王先生と言われた男はむっとした顔で虞姫に返した。
「相変わらずだな」
「おうよ、この通り元気だぜ」
「君のことは覚えている」
それもよく、という口調での言葉だった。
「我が校はじまって以来の暴れん坊だった」
「あの頃は毎日野郎共と喧嘩していたからなあ」
「一日三度もな」
「今は四度だぜ」
増えている、さらに。
「それを考えると少なかったんだな、あの頃は」
「そういう問題か、しかしだ」
「しかし？」
「今は妹さんから離れてくれ」
抱き締めたままの花姫からというのだ。
「これから集合して解散を言わないといけない」
「じゃあ大人しくするか」
「そうだ、そうしてくれ」
「それじゃあ花姫、またな」
虞姫は笑って花姫に言った。
「ここで待ってるからな」
「ええ、すぐ後でね」
「家まで戻ってな」
そして、と言うのだ。そうしてだった。
虞姫は今は妹から離れた。しかしその顔は笑顔のままだった、妹が帰ってきたことを心から喜んでそのうえで。
妹がいなくなった 完
２０１４・１１・１９
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