第二章
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「私より若い方ですが」
「ハンス様って仰いましたよね、今」
「年下の人に」
「ドクトル惚れ込んでおられるんですね」
「そうなのですな」
「それがなのです」
頬を赤らめさせうっとりとさえしてだ、テディーは看護師達に言うのだ。
「もう王子様、まるで白鳥に乗ってエルザ姫を救いに来た」
「ローエングリンですか」
「そうした感じの方ですか」
「若しくは円卓の騎士か」
こうも言うテディーだった。
「背が高く美形でしかも颯爽とされていて」
「もう騎士ですか」
「そうした方ですか」
「御覧になられているだけで」
それこそ、というのだ。
「もううっとりとします」
「先生若しかして」
「あのですね」
看護師達もそれぞれの昼食、ソーセージドイツ語で言うヴルストやベーコンを使った料理、それにパンやジャガイモそれにザワークラフトを食べつつだ。
そのうえでだ、こう言ったのである。
「そのハンスって人を」
「まさかと思いますけれど」
「お好きですか?」
「ファン以上に」
「いえ、そのです」
このことはだ、テディーは焦った顔になって否定した。
「そういうのではなくて」
「そうですか?」
「本当にですか?」
「ドクトルその人のことが」
「ファンであるだけですか」
「そうです、決してそうしたことはないので」
それで、というのだった。
「ご安心下さい」
「だといいですけれど」
「何か気になりますよ」
「それで今夜もですか」
「その方の試合をですね」
「観戦してきます」
そうするというのだ、そしてだった。
昼食を食べてだ、それから休憩時間の後勤務に戻ってだ。
夜になっていそいそと病院を後にして観戦に向かった。その彼女を見てだ。
看護師達はだ、ひそひそとだ、こう話したのだった。
「何かね」
「もうあれはね」
「そうよね、どう見ても」
「恋人とのデートよ」
「それに行く感じよね」
「何処からどう見ても」
「本当にね」
こう話すのだった、そして。
一人がだ、こう言ったのだった。
「ねえ、見に行かない?」
「ドクトルを?」
「あの人を」
「ええ、そうしない?」
こう同僚達に提案するのだった。
「ここは」
「そうね、それじゃあね」
「今からね」
「観戦に行くドクトルをね」
「観戦に行きましょう」
同僚達もこう応えてだ、そのうえで。
こっそりとテディーの後をついて行った、そのうえで。
観戦に向かうテディーを観るとだ、夜の道を行く彼女は。
実に足が速い、しかも。
やはり態度はいそいそとしている、看護師達はその彼女を尾行しながら話した。
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