暁 〜小説投稿サイト〜
地獄に落ちようとも
第五章
[1/2]

[8]前話 [1] 最後
「守らなければなりません」
「子供達の為にですね」
「彼等は何処にも行き場所がないのです」
 孤児院にいる彼等は、というのだ。
「だからこそです」
「あの子達を守る為に」
「あの方にはああなってもらいました」
 エジリアーノは、というのだ。
「そしてカモラの方々からも」
「寄付をですね」
「受けています」
 そうしているというのだ。
「それも多く」
「カモラは」
「はい、言うまでもありません」
 ナポリはおろかイタリア南部を牛耳る犯罪組織だ、シチリアを牛耳っているマフィアと全く同じ組織である。
「ですがそれでも」
「あの人達からですね」
「寄付を受けて」
「そしてその寄付で」
「教会、孤児院を運営することも」
 そのこともなのだった。
「私は選んでいます」
「全ては子供達の為に」
「そして貴女達の為に」
 シスター、そして他の教会の者達にも顔を向けての言葉だ。
「そうしています」
「そうなのですか」
「私は罪を犯しています」
 ここでだ、神父はまた俯いた。
「カモラから寄付を受け彼等と関係を持ちそしてあの様な人を殺してもらった」
「そのことが、ですか」
「はい、罪です」
 それに他ならないというのだ。
「地獄に落ちる罪を犯しています」
「地獄に」
「私は死ねば地獄に落ちます」
 自分自身で言った言葉だ。
「必ず、しかし」
「それでもですか」
「私はそれでいいのです」
 地獄に落ちて、というのだ。
「私一人がそうなって子供達も貴女達も救われるのなら」
「そうお考えなのですか」
「いいのです」
 こう言うのだった。
「それで」
「そう仰いますが」
 ここでだ、シスターも他の者達もだ。
 神父にだ、こう言ったのだった。
「神父様はです」
「子供達も私達もです」
「そして困っている多くの人達をです」
「救っておられます」
「これまでも今もそうですし」
「そしてこれからも」
 だからだというのだ。
「ですから必ず」
「神に救われます」
「だといいのですが」
 神父は周りにそう言われても浮かない顔だった、だが。
 孤児院の子供達も周りの者も神父についてだ、こう言うのだった。
「神父様みたいな素晴らしい人はいないから」
「だからね」
「あの人絶対に天国に行けるよ」
「天国に行かない筈がないよ」
「僕達皆を育ててくれてるし優しいし」
「公平でね」
 それで、というのだ。
「あんな心の奇麗な人はいないから」
「あの人が天国に行かないのなら誰も行けないよ」
「皆地獄に落ちるよ」
「誰も天国に行けないよ」
 こう言うのだった、そしてだった。
 誰もが神父を素晴らしい人と言い敬愛してだった、天国に行くと言った。神父が自分自身についてどう
[8]前話 [1] 最後


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ