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束縛の口紅
第二章

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「気をつけなさいよ」
「わかりました、そんな風になったら」
「浮気は問題外にしてもね」
「妻として嫌ですから」
「女はずっと少女なのよ」
 由梨は友香梨にこうも言った。
「わかるわよね」
「はい、ずっと恋をしていたいものですね」
「旦那にそういうことされたら」
「嫌ですからね」
「だからいい?」
 ここで由梨は強い声になった。
「私今ちょっとしていることがあるのよ」
「それ何ですか?」
「夜の。わかるわよね」 
 夜の夫婦生活においての話だった。
「ここからは」
「そういうことですか」
「技よ」
 由梨はかなり率直に言った。
「技の勉強をしてるのよ」
「そうですか、技ですか」
「それを磨くのよ」
 是非、というのだ。
「わかったわね」
「わかりました、ただ先輩お奇麗で胸も大きいのに」
「アイドルの娘と比べたら?」
「そう言われますと」
「友香梨ちゃんも奇麗だし胸大きいけれどよ」
 それでもというのだ。
「三年経つとね、結婚して」
「そうなればもう」
「本当にそっちに目がいったりして」
「最悪浮気ですね」
「そうしたことになるから」
「技ですね」
「そう、技を見に着けるのよ」
 友香梨に強く言う由梨だった、顔にも真剣なものが入ってきている。
「アイドルは一緒にいないけれど奥さんはいつも一緒にいるのよ」
「そのことは大きいですから」
「友香梨ちゃんもいいわね」
「わかりました」
 友香梨は由梨の言葉に真剣な顔で頷いた、そのうえで家に帰ると彼の夫である大輔は実際にテレビを観てだった。
 アイドルの娘に目を細めさせていた、その夫に対して。
 友香梨は何気なく彼の隣に座ってこう問うた。
「どの娘がいいのかしら」
「ああ、やっぱりな」
 大輔は妻の真意に気付かずしみじみとして答えた。
「敦子ちゃんかな」
「大島敦子ちゃんね」
「この娘が一番だよ」
 画面に映るセンターの娘を見ながらの返答だった。
「やっぱり」
「そうなのね」
「いや、今度コンサートに行こうか」
 こんなことも言う大輔だった。
「そうしようか」
「行くの?」
「ちょっとね」
 こう妻に言うのだった。その面長かつ白い顔で。眉は細く目は優しげだ、黒髪を奇麗にショートヘアにしているのが似合っている。
「行きたいなって」
「そうなの」
 友香梨は夫の言葉に応えながら由梨とのやり取りを思い出した。そうしつつ彼にそれを隠してこう答えたのだった。
「まあ行きたいのならね」
「行って来ていいんだ」
「アイドル位はね」
 やはり由梨とのやり取りを思い出しつつ言う。
「いいわ」
「アイドル位はなんだ」
「まあ、ね」
 浮気ではないか、というのは言わなかった。
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