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絶対に勝つ
第一章
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                        絶対に勝つ
 ハンナ=バイエルラインは通っているザクセンのある高校では陸上部に所属している。長距離ランナーでありマラソンの選手だ。
 それで毎日走っている、部活では努力家で知られている。
 その彼女にだ、部長はある日こう声をかけた。
「最近のハンナって必死だけれど」
「そう見えますか?」
 ハンナはそう言われて部長に顔を向けた。既にかなり走っていて顔からは爽やかな汗が流れている。ブラウンのショートヘアで目は緑だ、少女らしいというよりはボーイッシュな感じでだ、小柄で足の長さは普通だがすらりとしている。脂肪が少なく如何にもマラソンをしているというスタイルだ。声も明るく高いものだ。
「最近の僕」
「ええ、いつも以上にね」
「今度は勝ちたいですから」
 ハンナは必死の顔になって部長に応えた。
「あいつに」
「ああ、この前の大会の」
「はい、あいつに」
「貴女二位だったからね」
「あと少しで勝てたのに」
 苦い顔でだ、こう返したハンナだった。
「残念で悔しくて」
「それでなのね」
「今度は勝ちます」
 燃えている目での言葉だった。
「あいつに」
「ローザ=フォン=エルデスブルグだったわね」
「確か向こうの娘ですよね」
「そうよ、西のね」
「バイエルンの方の」
「そちらの生まれよ」
「別に東とか西はないですけれど」
 それでもと言うハンナだった。
「負けたことが悔しくて」
「今度こそはと思うからこそ」
「自然となんです」
「部活にも身が入るのね」
「はい」
 その通りだというのだ。
「部活以外にも走っていますし」
「自主トレもしてるのね」
「それと食事にも気をつけています」
「お酒も断ってるそうね」
「ビール好きですけれど」
 ドイツでは十五歳から酒を飲める、だから高校生のハンナはビールも飲めるのだ。だがそれでも今はなのだ。
「けれど」
「ビールはね」
「アルコールは運動によくないですし」
「ビールはカロリーが高いから」
「はい」
 それで、というのだ。
「飲まない様にしています」
「お水を飲んでるのね」
「レモンとかを入れて」
「考えてるわね」
「何かそうでもしないと」
 ハンナはその眉を曇らせて部長に答えた。
「駄目だって思いまして」
「そこまで気合が入っているのね」
「はい、そうしています」
「いいことね」 
 部長はハンナのその言葉に笑顔で頷いた、だが。
 ここでだ、部長は真剣な顔になってだ。そのうえでハンナにこうも言った。
「けれどね」
「けれどっていいますと」
「練習に励んで食事とかにも気をつけることはいいけれど」
「それでもですか」
「怪我には気をつけて」
 それには、というのだ。

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