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親孝行
第三章

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「これまでね」
「そうね、何かとね」
「全く、どうなのよ」
 また言った香蓮だった。
「こんなにお金を稼がないといけないって」
「仕方ないよ、このことも」
「それだけの額を言われたから」
「そうだよ」
 母の言葉は今は達観したものだった。
「作ってしまった借金はね」
「払うしかないから」
「それは仕方ないんだよ」
 こう娘に言うのだった。
「特に私等商売人はね」
「信頼が第一だから」
「そう、だからあんたも頑張るんだろ」
「ものは信用がないと売り買い出来ないわよ」
「質屋もね」
「そう、だからね」
 それ故にと言う香蓮だった。
「私も絶対に払うしかないと思ってるから」
「だから頑張るんだね」
「頑張って稼いで」
 そしてだった。
「お店大きくしてね」
「借金も全部払ってね」
「やることやるわよ」
 こう言うのだった。
「絶対に」
「じゃあ明日もね」
「気合入れて稼ぐわ」
 商売に励んでだ、こう言って実際にだった。 
 香蓮は稼ぎ続けた、商いに励み。そうして。
 その銭が充分に、彼女が知っている額だけ貯まったところでだ、母に言った。
「貯まったわよ」
「遂になのね」
「そう、貯まったから」
「金貸し屋さんのところに行きましょう」
 是非にというのだった。
「すぐにでもね」
「これでやっとよね」
「そう、やっとよ」
 桃姫は微笑んで香蓮に答えた。
「借金がなくなってね」
「それでよね」
「首が楽になるわ」
「家族のね」
「今まで本当にね」
「借金で首が回らなかったわ」
 まさにだ、そうした状況だったというのだ。
「正直言って苦しかったわ」
「本当にそうだったわね」
「幾ら稼いでもね」
「借金があるって思うと」 
 まさにだ、それだけでだったのだ。
「苦しいから」
「それがやっと終わって」
「逆にね」
「借金したかいがあったってね」
「そう思えるわね」
 借金を支払ったその後ならというのだ、こう母娘で話してだった。二人はすぐに金貸し屋に行って話をしてだった。
 銀、貯めたそれを全て出した。こうして借金を全て支払ってだ。
 二人である場所に向かった、そこは療養所だった。
 そこに行き中年の痩せた床に伏している男にだ、こう言ったのだった。
「あんた、もうね」
「お金の心配はいらないわよ」
「全部支払ったから」
「楽になれたよ」
「おお、そうか」
 その男は二人の枕元での言葉を聞き顔をほころばせて言った。
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