もう一つの運命編
第11話 奪還
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れ、蔓に巻きついた四肢を自由にしようとした。
(碧沙。わたしの、たった一人の友達。あなたを救い出せるなら、どんなに傷ついたって構わない)
蔓との綱引きに勝ったのは、片腕だけだった。
だが、片手があれば充分だ。
白鹿毛はすぐにロックシードに手を伸ばし、それを閉じた。
変身が解除され、巻きついていた蔓が目標物を失った。
巴は落ちるように脱出し、キャリーケースから携帯注射器を取り出した。
巴は息を停め、走った。
助走をつけて王妃に飛びかかり、王妃を地面に押し倒した。
すかさず王妃の首に携帯注射器の針先を当て、トリガーを引いた。注射器の中身が一瞬にして王妃の、碧沙の体内に注入された。
(で、きた。できた、できたできたできた!)
歓喜で叫び出しそうだったが、まだ懸念はある。
まだ王妃は碧沙の姿に戻っていない。
「――こうしようと、ロシュオとも話して決めていました。わたくしは正しい“始まりの女”ではありませんゆえ」
巴は何も答えない。
「セキグチトモエ。どうか許してください。わたくしは運命に抗えなかった」
巴は何も答えない。
「ふふ。本当にあなたはこの体の主のことしか考えていないのね」
やがて淡雪が散るように王妃の姿は消えた。
代わりに、いつもの制服姿の碧沙が現れた。髪も目も元通りだ。
碧沙はぼんやりと虚空を見ていたが、すぐに目を閉じて気を失ってしまった。
(やっとわたしの手に取り戻せた)
巴は碧沙を抱き上げ、碧沙をきつく抱き締めた。
初瀬は満身創痍の体を引きずり、城跡へと歩いて向かっていた。
この状態でロックビークルに乗れば、痛みから事故を起こしかねないから、徒歩を選んだ。
(帰ったらきっとトモは、ヘキサを取り戻してるんだろうな)
苦笑した。その未来図は信頼ではなく、ある種の諦めから来るものだったからだ。
どれだけ慕われても、巴の中での順位は、1位が呉島碧沙で、初瀬はどうやっても2位以上にはなれない。今までの交流で嫌と言うほど知っていた。
(でも、これでトモがやることやってたら、俺も、あの時の白いライダーみたいに、トモを守れたって思ってもいいよな?)
――いつからだろう。初瀬亮二の中で“黒影”が「勝つための手段」から、「守るための力」に変わったのは。
“亮二さん”
(分かりきったこと、か)
ようやく玉座の間跡に着いた初瀬。
玉座の下。巴が座り込んでいる。
「トモ」
痛みを悟られまいとなるべく注意して呼んでみた。
「! 亮二さん」
巴がふり返った。いつもの笑みで。命に関わる重傷を負っているらしい姿では
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