2ndA‘s編
第十八話〜立つは誰がために〜
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た。しかも、治療を終えた今でも峠を越えたとはいえ、予断を許さない状態であることに変わりはなく、よしんば今すぐに目を覚ましたとしてもすぐに聴取を行える状態ではないのだ。
そして後者は、下手に彼のことを報告することで、本局の上層部に自身を含めた今回の事件に関わった人間全てを危険視させてしまうのではないかという懸念があるためだ。
「…………」
また吐きそうになったため息を飲み込み、コンソール横の小テーブルに手を伸ばす。伸ばした先には彼女愛用の湯呑と急須、そして角砂糖とミルクをそれぞれ入れた瓶があった。その内の湯呑を掴むと彼女はそのままそれを口に付け、傾ける。
「…………?」
しかし、どれだけ傾けてもご希望の飲料が口に到達しない。
それを不思議に思った彼女は、そこで初めて湯呑が空であることに気付いた。一旦湯呑をテーブルに戻し、今度は急須を軽く持ち上げる。
「…………はぁ」
その軽さから、急須の方も中身が空であることを知った彼女は今度こそため息を吐いた。
アースラ・一室
アースラ内の一室。窓のないその部屋には今、足元が見える程度の最低限の明かりしか点っていないため、暗さ以外には冷たさや重さを感じさせた。光源となっているのは、その部屋に設置された医療用ベッドに横たわる患者の心電図をリアルタイムで映し出すモニターである。
明かり以外にその部屋を満たすのは、心電図を映し出すモニターがグラフに合わせて流す機械音声と患者である横たわっている男性の規則的な息遣いのみだ。
時間の流れが曖昧になりそうなその空間内で、横たわっている患者は先の戦闘で墜落し、収容されたライ・ランペルージその人であった。
今でこそ静謐な部屋で安静にできているライであったが、彼が収容された直後はてんやわんやであった。
不参加を表明した筈の彼が、特大の砲撃魔法が放たれる直前に目標へ突撃し、障壁を抜いていこうとし、全てを抜くことこそできなかったが、片腕を犠牲にナハトヴァールのコアの位置情報を取得。最終的にはぎりぎり離脱が間に合うが、魔力の枯渇と身体的疲労と損傷により墜落。これだけで騒がれるには十分なのだが、今回の戦闘により彼が被った怪我の具合が明らかとなった事が、周りの人間を更に焦らせる原因となる。
途中でシャマルからの応急処置を受けたとは言え、人型と戦闘した際に空いた腹部の風穴から始まり、特攻まがいの攻撃により負った裂傷。極めつけはそれを負った状態で受けた衝撃による全身打撲と片腕の切断、それに伴う既存の傷の深刻化である。医者に言わせれば「なんで生きていられるのでしょうね?」いう有様である。
科学技術の医療のみであれば完全にさじを投げられていたであろうその怪我は、魔法と言うデタラメが存在しやっと治療が行えるというレ
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