夜の帳に半月が笑う
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妬することなんて、初めから無駄だ。彼に受け入れられるかどうかは、私達個人次第なのだから。
受け入れるだけじゃなくて呑み込もう。そして……捻じ曲げてみせよう。大切なあの人のように。それが世界の理不尽であれ、好きな人の心であれ……黒の主になる私がすることは変わらない。
「よしなに……“お姉様”」
「……まだそう呼ぶのは早いけれど……まあいいでしょう。及第点をあげる」
「ありがとうございます」
どうやら試していたらしい。
欲を取るか何を取るか。私に相応しい答えを出せたら合格で、“彼女”の線を越えたなら不合格。
いじわるかもしれないけど、試すのは信頼の裏返しでもある。それが“彼女”なりの気遣いの一つ。
じわりと、暖かい気持ちになった。
さっきまでの感情はもうなかった。厳しく優しく、それが彼と“彼女”の在り方で、私はそれが好きだから。
「じゃあ、月。ちょっとからかってくるわね」
「はい。いってらっしゃい」
ふりふりと手を振った。
その背を見送って私は思う。
多分だけど……“彼女”も彼のことが気になってる。
そうでなければ雛里ちゃんとの時間を邪魔しようなんて思わなかったはず。
同じ未来を描き、同じ想いを宿しながら桃香さんの所を離れなかった事実が悔しくて悔しくて……黒麒麟に認められないことが許せなくて苛立って……その果てに今があるんだろう。
曖昧にぼかされたままの関係は居心地がいいけど、彼はそれだけじゃなくて思いもよらないこともする。
同じで違うその存在に恋をするかは分からない。覇王の高みに昇らんとする“彼女”が、私みたいな普通の少女の恋心を持つかも分からない。
でもきっと、恋じゃなくても、彼と“彼女”の関係は……もう既に一定の親愛に到達している。
ふるふると頭を振った。
どちらかが一歩を踏み出さないと、二人の関係は変わらない。どっちもが割り切れるから大丈夫だと思うけど……
――その時が来たら、私が手伝おう。
もし、“彼女”が彼を選んだなら。
覇王の中に見え隠れするその救われない“彼女”を、私が救おう。
増えて行く大切全てを幸せに……黒の主になるならそれくらい出来ないと。
幸せを探せる世界になった時に、ゆっくりと。
穏やかな夜。
嫉妬の感情は一寸だけだったようで、もはや感じることは無い。また少し、私は呑み込んだらしい。
変わってしまった私でも、まだ想いを繋いでる。この時があるのは生かしてくれた命があるからだ。人としての感情を持てるのも、全て。
だから感謝を。全てに感謝を。
一つ一つと段を上って、必ず“彼女”と同じ高みに立とう。そして……“彼女”すら越えないと……
「だって私がなる王は――」
夜の闇に声を零
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