夜の帳に半月が笑う
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女”が、私に問いかける。
「お、起きてたんですか……」
「寝てたわよ。あのバカが起きるまでは。あなたと同じで眠りが浅かったというだけ」
そういえば余りお酒を呑んでいなかったように思える。
考えて飲んでいたんだろう。誰にも気の抜けた所を見せない“彼女”らしい。
ゆっくりと身体を離された。静かに伸びをして、“彼女”は私に微笑みを見せる。
「さて……勝手なことばかりするバカ者には罰を与えないとね。私は少し話があるから追いかけるけれど、あなたはどうする?」
「わ……私は……」
追い掛けたい、という言葉を呑み込んだ。
何を話すつもりなんだろう。きっと彼のことだから、何かしら乱世に関係したことを話すと思う。
それより……どうしてか胸の辺りがもやもやする。
雛里ちゃんはいい。けど、“彼女”が会いに行くのは……
「ふふ、一つ宣言しておくけれど……私の可愛い子達であのバカに惹かれるモノが出たらけしかけるわよ?」
「え……」
「当然でしょう? 私と並ぶというのだからその程度の甲斐性は持って貰う。見てきた限りでは……黒麒麟も秋斗も人の絆が深ければ深い程に逃げられなくなるのだから。
昔の絆も大切に、でも今の絆もより深く。そうして……今の道化師も手に入れる」
茫然と、彼女の蒼い水晶の瞳を見つめた。
そうだ。そうなんだ。私や詠ちゃんやだけじゃなくて……誰かしら他の人が懸想を持つこともある。
友達のように過ごしていたから気にならなかった。深く繋がっているからと、油断している。
今の彼が私と詠ちゃん達を特別視しているのは、黒麒麟の時から支えていたという事実があったから……ただそれだけ。
本当は一からの関係の方が心地いいのではなかろうか。
――だって……今日の夜の彼は……本当に楽しそうだった。
ズキリ、と胸が痛んだ。
なんだろう、この痛みは。もやもやして、嫌な気持ち。こんな感情を持っている自分さえ嫌になりそうなそんな感覚。
――例えば、私達以外の誰かと寝台を共にするなんてことになったら……
ズキリ、と胸が痛んだ。
妄想してしまう光景に、嫌な気持ちが湧きあがる。
私達四人で幸せに寝る時間を他の誰かとしている……もやもやする。
ああ、そうか……これは嫉妬だ。
此れは醜い感情だ。独占欲と優越感から来る人間の欲の発露。
余り持たなかったはずのこの感情を感じれば、普通になったんだなと実感する。
器が小さくなったと思うけど……存外、私は人にも戻れるらしい。
いい。別にいい。大丈夫だ。簡単なことだ。
“あなた”の好きにすればいい。私は、黒の主に相応しくならないと。
きっと彼は何も言わずに、あなたの予想を超えるから。私はそれを信じよう。
嫉
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