夜の帳に半月が笑う
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る。固くならないと決めたのだから、と。
「ええ、私が隣に並べてもいいと思えるのは……月と黒麒麟、そして劉備だけよ」
さしてその他には興味が無いと、華琳の声から分かった。
「孫策は?」
「ついでで平穏を望むようなら覚悟が足りない。火の粉しか払わないようなモノは並べるに足りない。器はあれども想いの広さが違いすぎる。どうしてその程度のモノに、自分達のことを最優先として考えるモノに大切な者達を預けられる? そのモノが思い描く平穏は幻想でしょう。ことこの大陸に於いてだけは」
欲しいのはあくまで自分の世界で、それを害するなら殴って従わせるだけ。
国を一つにしてしまえば全てが自分の民になる……などとそんな甘ったれたことは言わない。
協力者は欲しいし、それが臣下になればいいというだけだが、華琳の言う隣に並べてもいいとは……自分の代わりに天下を統一してもいいと認めているモノだった。
孫呉の大地密着型の思考は『臣下として』は正しい。与えられた領地を守ることに特化した、幽州の白馬の王と同じく。だが、天下統一まで話を広げると華琳としては否。孫呉の地“しか”愛せない存在では、万が一敗北した場合でもこの大陸を任せることなど出来ないのだ。
――何故ならば……王とは公平に物事を見なければならないモノであるのだから。優先順位がある時点で器が知れる。
雪蓮のことは認めている。乱世で覇を競う相手としてはいいだろう。
それでも国創りに関してだけは……絶対に認めない。大陸全てを想う覇王として。
「じゃあなんで劉備は認めてるんだ?」
「“あなたや麗羽と同じ”で民の剣だからよ。私とも似ているあなたには教えてあげましょう。
きっと私を殺すのは……私自身か民だけ。否、それ以外に殺されるつもりは無い」
なんでもないことのように言って退ける華琳に、秋斗は小さく苦笑を漏らした。
「それを望む王ってのはお前さんくらいだろうよ」
「月はそれをしようとしたけれど……それに黒麒麟も、でしょう?」
「あー……ゆえゆえには賛同だが、黒麒麟は王にはなれんよ。分不相応ってやつだ」
「私の裏として動ける男がよく言うわね」
呆れを込められたその声は、いつも通りに自己評価の低い彼に対してのモノ。
また彼は小さく笑った。
「俺はそんなんじゃないけど……まあいいや。大体読めたから。劉備と孫策、んで馬騰と行う交渉の内容はソレ系統でいいかね」
「ええ……と言ってもあなた、また別のこと言いながら下らないことも考えてるでしょう」
ぴたりと言い当てる声は弾んでいた。
――下らないことは無いさ。お前さんの気持ちがちょっとだけ分かったんだから。
彼は内心で微笑む。少しばかり今回は自分が勝てそうだと思った。
優しく緩く
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