夜の帳に半月が笑う
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実に必要不可欠であり、文化の違いを合併せず、認めた上で手を繋げばいい。大陸内での分裂は絶対に認めることは無いが。
大陸を越えて侵略するのなら、それはただの暴君に堕ちる。
夢は大きくともいいが、彼はソレを許さない。彼が侵略を是とする妥協点は大陸以外には決して出ないのだ……二千年後の世界の情勢を知っているが故に。
「イラつくモノ言いね。あなただけ知ってるなんて――」
華琳は拗ねたように口を尖らせ、小さく鼻を鳴らした。
――ずるいじゃない。
続きの言葉をどうにか呑み込む。遅れて気付いた事柄に、舌打ちを漏らしてしまいそう。
不機嫌さが際立つ。今、自分が言おうとしていたことは子供のようなわがままだ。教えて欲しいとねだるのは、華琳としては有り得ない。
だからだろう。せめて不機嫌を露わそうと、彼の背に強く体重を掛けた。
「うおっ」
「ふん、ばか」
「危ないだろが。ひなりんも居るんだぞ?」
「うるさい。生意気なのよ」
「しかしだな……」
「口を閉じなさいバカ秋斗」
黙らせようと思っても、また子供のような口ぶりになってしまった。
いつもこうだ。調子が乱され、優位に立とうと思っても偶に出てくる『華琳』の自分。
――それが楽しいとも思えるのだから度し難い。居心地良く感じている私を許せなくなる。
落ち着け、落ち着けと心で唱えた。
空を見上げて、誤魔化すように酒を一口。そうして華琳は心をやっと落ち着かせた。
もうやめだ、酔っているせいにしてしまおう、と思った。きっとそうなのだ。酒に酔って楽しい時間に酔って……だからこんなに気を抜いてしまっている。
「あなたの知ってるモノは全部作り出してあげるから見てなさいよ」
彼の耳に拗ねた声が聴こえた。華琳としては拗ねた声を隠したつもりだったが、それでも彼にはそう読み取れる。
背中に掛かる重みは少しばかり優しく感じた。
心の内で、彼は苦笑を零した。
可笑しかった。可愛く感じた。でも……やっぱり哀しかった。
――なんで俺が追い駆けられる立場になってんだ。
心を燃やして戦えたら良かったのに……そう、秋斗は思う。現世の知識も無くて、産まれたままで努力して、それでも届かないであろうこの覇王に、自分が追い縋ろうと出来れば良かったのに、と。
「クク……マジか……あははっ」
「……なによ?」
今は野心を持てない。現世ではソレを持っていたから社畜になって働いたが、ズルをして虚飾に塗り固められたモノで得た場所になど価値は見いだせない。
男なら正々堂々真っ向から奪い取りたい。利用できるものはすればいいが、与えられたモノでは自分自身を許せなくなる。その意地っ張りでプライドの高い所は……華琳と似通っている心の在り方。
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