夜の帳に半月が笑う
[3/11]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
つまらない事を聞いてしまいそうで。
線引きが一つ。心の中に入られぬよう、そして入らぬように。それでいて近くに居てもいいように、と。
「おいしいお酒ね」
「店長の新作だよ。米を元にしてイロイロ試行錯誤してるらしいんだが……随分といいもんになってきた」
「あなたが知ってる味なの?」
「あとちょっとってとこかな。コレでも十分イケるけどさ」
「へぇ……完成品を楽しみにしておく」
「ツマミも楽しみにしとけ。漁業の開発が進めばもっと多くの種類の刺身をツマミにして食えるようになる」
「まさか生の魚があんなに美味しいとは思わなかったけれど……楽しみが増えたわね。他にも調理法がたくさんあるんでしょう?」
「ああ。でもさっきも言ったけど川魚は刺身にすんなよ? 大抵の場合は寄生虫で腹を壊すから」
「川魚で病気になる理由も知れるなんて、ホント、あなたの知識には驚く他ないわ」
別に探るつもりは無かった。普通に聞いただけだが、秋斗は誤魔化すように酒を一口。
「先達様に感謝しようか。いつかは知れる知識と情報なんだ。生きている皆が外に目を向けたら、だけどさ」
憂いを帯びた声が少しだけ。
彼の言いたいことが何かは、華琳とて直ぐに読み取れる。
「侵略されない程強い国を創り上げるから……必ずそうなるわよ」
強い瞳で、輝く意思を宿して、華琳は告げた。背中越しであれど伝わる熱さが其処にあった。
それは彼に対する宣言。秋斗と華琳のどちらもが抱く、国を作らんとするモノとしての想い。
大陸の乱世など此処で終わらせる。
五胡からの侵略でもも内部の諍いからでも崩壊の隙を与えないような、そんな国を創り上げる、と。
今を生きる命を支払って悠久の平穏を思い描く。ついでで齎せるなど思うことなかれ。其処に至る道は険しく遠い。支払う命に違いはあるか……二人にとっては、きっと否。
それがどんなモノでも、二人は支払うだろう。思い描く世界が必ず作れると確信するまでは。
ふっと、秋斗が頬を上げた。
「クク、仕事が増えるぞ? なんせ……お前さんは外の世界を知っちまった」
異端知識で大嘘を吐きながら、秋斗の行いには一つの意味が出来ていた。
最近気付いたことだ。華琳が殊更に興味を示し、朔夜が目を輝かせて欲しいとねだるから……彼は自分の行いが不可測を齎していると気付いた。
――求めればいい。この大陸だけじゃなく、外の国まで。
俺が嘘を付くことで多くの智者が興味を持ち、侵略するでなく外と手を取り合える国が作れたなら、二千年後の為の布石になる。
天竺を目指した僧が居たように。海を越えた先の地平を求めた航海士が居たように。誰かしら彼の知識の源泉に想いを馳せるモノは出よう。
追い求めるなら国同士の交流は確
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ