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食事をしながら
7部分:第七章

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第七章

「フランスの為にだ。彼には自滅してもらった」
「全ての責任を背負ってだな」
「それでフランスの為に奉公してもらったのだ。彼も本望だろう」
「そうだといいがな」
「思えば多くの人命が奉公したな」
 そのタレーランによってである。
「素晴らしいことだ。しかし私もだ」
「貴殿もか」
「フランスにとって害になることをした記憶はない」
 彼もだ。また言い切ってみせたのだった。
「一切だ」
「言い切ったものだな」
「私が謀略を企んでいると言われている時はだ」
 その時はだ。どうかというとだ。
「常に共犯者がいるのだ」
「ほう、初耳だな」
 フーシェはタレーランの今の言葉にだ。シニカルに返した。彼はここでもシニカルだった。しかもそのシニカルは確かな冷酷のあるシニカルだった。
「それはな」
「初耳というのか」
「そうだ。貴殿の様な人間に共犯者がいるのか」
 こう言うのである。
「そんな者がいるのか」
「いる。それはだ」
「それは?誰だ」
「フランスだ」
 臆面もなくだ。フーシェに対して言ってみせたタレーランだった。
「その場合は常にだ。フランスが共犯者だった」
「我等の祖国がか」
「そうだ。フランスが私の共犯者だった」
 こう言うのである。やはり平然としている。
「それも常にだ」
「フランスか。それを言うならだ」
「貴殿もだというのだな?」
「人は私を常に裏切る男と言う」
 この評価を否定する者はいない。彼以外には。
「そうな。しかしだ」
「一つだけは裏切っていないのだな」
「そうだ。私は常にある存在に絶対の忠誠を誓ってきた」
 間違ってもだ。国王でもジロンド派でもジャコバン派でもない。ましてやロベスピエールやナポレオンでもない。どの組織でも個人でもなかった。
 では何なのか。それを話すのだった。
「フランスに対してだ」
「貴殿もそう言うのか」
「その通りだ。私はフランスは裏切らない」
 また言う彼であった。
「何があろうともだ」
「例え誰を裏切り騙してもだな」
「フランスは裏切らない」
 それは絶対だというのである。フーシェの今の言葉は揺るがない。
「誰を騙したとしてもだ」
「誰をもだな」
「そういうことだ。私はフランスを騙したことはない」
 彼の祖国はというのだ。
「裏切ったこともない」
「ではだ」 
 フーシェの話をそこまで聞いてだ。そのうえでだった。

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