もう一つの運命編
第8話 免疫血清
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きっと碧沙が誰より再会を望む、光実と裕也のもとへ。
若干不安を残しつつも、巴に続いてホールを出ようとした初瀬を、
「初瀬さん」
光実が引き留めた。
「何だよ」
「これ、あげます」
光実が差し出しているのは、赤いドライバーとマツボックリのロックシードだった。
「な、なんかあるんじゃねえだろうな」
「ありませんよ。持ってて邪魔だから、要る人にあげるだけです。戦極ドライバーより強い変身ができますよ、これ。要らないんですか。関口さんを守るには絶好の道具になると思いますけど」
「……そこまで言うなら、貰っといてやるよ」
初瀬は赤いドライバーとロックシードを受け取った。
ロックシードのほうは、ただのマツボックリかと思いきや、青い半透明の素材に覆われたマツボックリだった。
「用はそれだけです。早くしないと、関口さん、行っちゃいますよ」
初瀬は最後まで胡乱な目を光実に向けつつ、ホールを出て巴を追いかけた。
巴と初瀬が研究室を出てから、裕也は光実の頭を撫でた。
「よくできたな」
あのゲネシスドライバーは貴虎が使っていた物だ。光実にとっては兄と繋がる唯一の品。それを初瀬という他人に、光実は渡した。
賢明な判断であり、勇気ある決断だ。
マツボックリのエナジーロックシードを研究室の家探しで見つけた光実だから、できた決断。
「――勝てるでしょうか。ロシュオに」
「それは、二人次第。そもそも巴ちゃんも初瀬もロシュオと戦いに行ったんじゃないんだからな」
「分かってます。碧沙を取り戻しに、ですよね。でもそれは、ロシュオから愛する人を奪うってことでしょう? 衝突はきっと避けられない。だから――せめて、少しでも無事に帰れる確率を上げられたらって」
裕也は微笑み、光実の頭をぽんぽんと叩いた。
「ほんじゃ、俺たちも俺たちにできることをやりに行くか」
「はいっ。MISの場所なら知ってます。こっちです」
光実が歩き出す。その背を見つめながら、いつか光実も貴虎のように頼れる背中を見せる日が来るのだろうと、裕也は本当の兄のような気持ちで思った。
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