暁 〜小説投稿サイト〜
無欠の刃
下忍編
顕現
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はカトナとの約束を絶対に破ったりしない。

 ―死なないで。

 声に出さない声で呟かれた言葉の懇願を、跳ね除けたりなんて、絶対にしない。
 彼女が周りの誰にも何も期待しなくなった中、それでも自分だけには期待している事実を知っているから。

 「守るものがあるやつは強いって、知ってるかよ?」

 たとえそれが、約束であろうとなんだろうと。
 カトナがサスケを裏切らないように、サスケもまたカトナを裏切らない。

・・・

 ナルトはいろんなことを知らないふりしている。
 たとえば、カトナが自分を守るために傷ついていること。
 たとえば、ナルトの中に眠る九尾は両親を殺したこと。
 たとえば、自分に向けられる悪意がさびていないこと。
 いろんなことを知らないふりして、許容してきた。
 知らないふりをすれば、目を逸らせば、許すことは酷く容易かった。
 だから、いつものようにしたはずなのに。
 どうしてか、それが出来なかった。
 目の前の存在に対して殺意が湧き、憎悪が凝った。
 許せないとは、こういうことをいうのかと。
 ナルトは呆然とそれを眺めて、見つめて。
 次の瞬間、その体の中のチャクラが暴発した。
 
・・・

 必死に走り抜けてたどり着いたカトナが目にしたのは、信じられない光景であった。

 「あ、れ」

 九つの尾が、一定のリズムで揺れている。
 体の周りに取り巻く赤いチャクラ。二度と目にしたくないようなそれが、目を焼く。
 カトナはあれと目を見張った。

 「な、なる、と」

 ナルトはこちらを見ない。見ようともしない。
 酷く、酷く。熱い。
 肌が痛い。燃えるように。
 どうしてか。自分の身体に刻まれた封印式が赤く熱を持っている。
 おかしい。それはナルトが九尾のチャクラを使ったら熱くなるのだ。今のナルトが使うわけがない。うまくコントロールできるようになるまで、封印式が強化されていた筈だから、使えるわけがない。
 なのに、なんであついの。
 目を見開いて、カトナは必死になるとへと手を伸ばす。
 が、ナルトに届く前に、チャクラに弾かれる。
 ばちり、ばちりと痛みが走って。眩暈が起きる。
 縋るような声が喉から漏れる。

 「ねぇ、なる、と。なると」

 どうしてそんな目で私を見つめるの。どうしてお前がそんなチャクラを纏ってるの。どうしてお前の体が金色の毛でおおわれていくの? どうしてお前が、そんな、そんな。
 狐が、彼女の脳裏をよぎる。
 どうしてこんなことになったのだと、彼女は呆然としたようにナルトを見て、そして彼の方を見やる。
 視界の端で笑う彼は驚いている様で。だけど、酷く楽しそうだ。
 こいつだと、それを目視したカトナは直感する。
 
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