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SAO−銀ノ月−
第短編話 U
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…こんなのにあたしの作品が……」

「まあ、その……そういう時も、あるさ」

 割と本気でショックを受けるリズの肩に手を置きながら、ショウキはその生肉の延べ棒を観察する。まず第一の障壁として外壁と化しているほどの油、第二の障壁として物体を弾くほどの脂分、第三の障壁としてそれらを通り抜けた後の肉本体の硬度。それらが兼ね備えられた結果により、リズの包丁すら受け流すほどの防壁となっている。

「……よし」

 精神を集中させながらショウキは日本刀《銀ノ月》の柄に手をかけると、その生肉の延べ棒へと狙いをつける。ショウキのその動きから、彼が何をしようとしているか察したリズは即座にその場所から離れると、ショウキは愛刀を煌めかせる。

 彼が最も得意とする抜刀術によって加速した日本刀《銀ノ月》は、その速度をもって第一の障壁である油を寄せ付けず、その鋭さを持って物体を弾くほどの脂分を突破すると、岩盤をも両断するその刀に硬質化したとはいえ生肉ごときが太刀打ち出来る訳もなく。ショウキが再び刀を納刀した瞬間、生肉の延べ棒はきっちり二等分されていた。

 ……いや、刃の軌跡すら見せぬ抜刀術はそれだけには留まらず。ショウキが日本刀《銀ノ月》の柄から手を離した瞬間、その生肉の半分は全て食べやすい手頃なサイズへと切り裂かれていた。

「わぉ……」

 実際のところ、彼の腕前を面と向かって見ることは少ないリズは、二等分するだけでなく手頃なサイズに切り分けた剣術に素直に感嘆する。リズが見ているからといって、普段よりショウキが気合いを入れているという事実は知らず。

「じゃあ悪いんだけどショウキ、ちょっとあたしの分も斬ってもらえると……」

「いや。これは勝負だ。自分の分は自分で斬るんだな」

 しかして手頃なサイズに切り分けられたのは、二等分されたショウキの分の生肉のみ。自分の分もお願いしたリズだったが、それはすげもなくショウキに断られてしまう。勝負だから、などとストイックな様子を見せかけているが――斬った生肉を自分のストレージに放り込んでいく、ショウキに浮かんでいる顔は不戦勝を確信した笑み。生肉を斬ることの出来ないリズには、この勝負、勝ち目はない……!

「くっ……」

 リズもそれが分かっているのだろう、自らの置かれた状況に苦々しげな表情を浮かべていた。対するショウキはニヤリと勝利を確信し、そのまま高笑いでもあげそうな雰囲気でリズベッド武具店を後にする。ここからは敵同士、自らの家で料理をするのみだ――

「さて……」

 ――などと勢いでこんなことになってしまったが。もちろんショウキには、幾ばくかの料理スキルはあるものの、料理の心得などまるでない。さらに料理スキルといえども万能ではなく、レベルに応じて勝手に作られるということもな
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