第短編話 U
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であり、料理のための『食材』だった。
「そんなだから、あんたの昼飯にどうかなって」
「いや待てこれ食えるのか」
余ったからついでに作ってあげたわよ――なんて古来よりあらたかな照れ隠しではなく、本気でいらない。しかして食材ならば捨てるにももったいなく、ショウキへとあげようとしたものの――破滅的生肉に圧倒されている、ショウキ本人の反応は芳しくない。当たり前だが。
「そりゃ……肉なんだから食べられるんじゃない? なんなら、あたしが作ってあげましょうか?」
その言葉を言ってしまった後から、リズは自分の失言に気づく。作ってあげましょうか――などと言ったところで、自分には料理スキルどころか、料理の経験すら不明瞭だというのに。
「……あ、やっぱ今のな――
「いや、むしろそっちの方が不安だ」
「――ちょっと、それどういうことよ」
リズが自らの発言を否定するよりも早く、ショウキは即決即断でリズの申し出を断った。ショウキからしてみれば、リズには料理スキルがないのは明らかなため、冗談だと考えたのだが……いざあっさりと否定されると、それはそれで不愉快で。女の子としては。
「だってリズ、料理出来ないだろ? スキルとかは別にして」
「や、やってみなきゃ分からないじゃない!」
ショウキの『リズって料理出来なさそうなイメージ』から放たれた質問に、リズは慌てて否定するものの、その答えはむしろ肯定したようなもので。自分でもそれに気づいたリズは顔を少し赤くしながら、ショウキに対して指をビシリと突きつけた。
「なら勝負よ! この肉をどっちが美味しく料理出来るか!」
「勝負か……よし」
気がつけば話がよく分からない方向に向かっていったが、半ば勢いだけ故に止まることはなく。ここに料理対決が始まろうとしていた。
圧倒的生肉から、金の延べ棒サイズの一つの塊を引き抜くと、リズはお手製の包丁をストレージから取り出す。もちろん料理用ではないが、この際斬れるならば何でもいい。対決――というのだから、まずは二人に生肉を分けなくてはならないが、その延べ棒サイズではあまりにも大きい。そのため延べ棒サイズを二等分すべく、リズはその筋力値でもって包丁を振り下ろすが――
「んっ!?」
――ヌチャ、という油な音とともに肉は包丁を弾き、リズの包丁はその切れ味を持って机を両断しにかかるが、それはすんでのところで阻止される。何かの間違いだとばかりに、リズはもう一度包丁を振り上げ、その筋力値でもって包丁を振り下ろすが――
「……脂が乗ってるな」
――ショウキのコメントが追加されたのみで、結果は先とまるで変わらず。リズの包丁は肉の油に阻まれ、その切れ味を活かすことは出来なかった。
「こんな…
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