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藤村士郎が征く
第24話 凡夫の犬歯は、気高き名犬に届き得るものなのか
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 −Interlude−


 「もうヤッテルヨ。シロ兄!」
 「解ってるから、そう急かすな」

準との決闘を終えた士郎一行は、義経に挑戦している一子の応援に来ていた。
 この決闘の主役である2人を囲むように人だかりが出来ていたので、それに混ざるように観戦する事にしたようだ。

「一子は、義経相手に奮闘しているようですね。若」
 「ああ、今のところな」

 お互いに威力よりも、手数による技で切り結び合っている。
 とは言っても、矢張り流石の源義経のクローンか、彼女の方がやや優勢だ。
 本来の彼女の実力を考慮すれば、現時点ですでに大きく戦況は傾いていただろうが、多くの挑戦者と戦っていたために本人すらも気づいていない様だが、動きの切れが全開時に比べて6割5分〜7割にまで減少していた。

 「なんという苛烈さだ。義経は驚愕した!」

 まだ、対戦相手である一子に賞賛を送る暇は有る様だが。
 そんな義経のアクションに、どーもと言う返事をしながら苦笑いをする一子。
 別に称賛を送られた事について苦笑いしたのではなく、仕掛け中だった戦法を義経の思わぬ対応に仕切り直しを余儀なくされた事だった。

 「如何やら初めからやり直すようですよ?一子は」
 「そうみたいだな」
 「何の事ですか?士郎さん」
 「アレ・・・・・・ですね。士郎」


 〜回想〜


 時間を遡り、本日の早朝。
 藤村邸では何時もの様に一子の修業を行っていた。

 「隙アリ!」
 「違う、それはフェイクだ!」
 「きゃうん!?」

 士郎の偽装された隙に引っかかった一子は、飼い主に叱られた飼い犬の様な悲鳴を上げて、軽く吹き飛んだ。

 「うーーん。士郎さんの戦法は、どれが本物の隙でどれが偽装か判らないわー」

 立ちながら唸る一子の様は、もし彼女が本当に犬ならば耳が垂れており、クーンと悲しそうに鳴いている事だろう。

 「そこが肝なんだよ、一子。特にこの戦法はカウンターも上達しなければならないしな。強く成りたいと馳せる気持ちもあるだろうが、この道は地道な努力が肝心なんだよ」
 「クーン・・・」

 今度こそ本当に鳴いた。

 「だがその前の隙の偽装は、なかなか良かったと思うし・・・・・・一子」
 「は、はい!?イッ、イエッサー!」

 別に怒られているワケでは無いのに、直立不動に加えて何故か敬礼をする。

 「今日か明日には、彼女――――源義経に挑戦するんだろ?」
 「は、はい!順番次第だからもしかすれば、それ以上に成っちゃいますけれど・・・」
 「そうか・・・。なら、一子自身で最終的に決める事だが、教えたこの戦法を解禁する」
 「え・・・・・・えぇえええぇええええ!!?」
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