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馬人
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第一章

                         馬人
 ガリバーは何度目かの旅に出た。そうして辿り着いたのはだ。
「今度はこの国か」
「いやいや、ようこそ」
「ようこそ来られました」
 随分と紳士的な態度の人々に出迎えられた。ただしその人々を人間と呼ぶべきかどうかガリバーはかなり躊躇ったのも事実である。
 服は着ている。人間の服だ。しかし顔は馬であり蹄もある。馬が立って服を着てだ。そのうえでガリバーに対して話してきているのである。
「人間の方ですね」
「そうですね」
「はい、そうです」
 ガリバーは彼等にありのまま答えた。
「そして貴方達は一体」
「私達はフウイヌムです」
「自分達をこう呼んでいます」
 やはり紳士的に彼の問いに答えてきた。
「ですから宜しければです」
「そうお呼び下さい」
「フウイヌムですか」
 ガリバーはその呼び名を口だけでなく頭でも反芻した。
「それが貴方達の御名前ですね」
「その通りです」
「それでお呼び頂けますか」
「はい」
 彼等の申し出に素直に頷いた。そうしてであった。
 彼はフウイヌム達の生活に入った。その生活は優雅で気品がありしかも落ち着いたものだった。ガリバーはその生活にまずは満足した。
 彼等の生活習慣も文化もガリバーの国と変わらなかった。フウイヌム達は実に知的であり理性的な者達だった。
 ガリバーはその彼等に感銘を受けた。そうして彼等に対してこう言うのだった。
「貴方達は素晴しいですね」
「素晴しいですか」
「私達がですか」
「はい、とてもです」
 恍惚とさえしている言葉だった。
「貴方達は素晴しいです」
「そうでしょうか」
「私達はそうは思いませんが」
「私達自身は」
 しかしフウイヌム達は自分達ではこう返すのだった。その蹄の前足を手と同じように使って器用に紅茶を飲みながらガリバーに話す。
「別に」
「そうしたことは」
「そうでしょうか」
 ガリバーは彼等の言葉を信じなかった。
「私から見てです。貴方達はとても素晴しいのですが」
「いえいえ、同じですよ」
「貴方達人間と変わりませんよ」
 ところが彼等はこう返すのだった。
「何も変わりません」
「何もかもが同じです」
「いえ、貴方達は紳士的ですし理知的です」
 これはガリバーが見ている彼等の姿だ。彼はフウイヌム達のその高潔な精神性にこそ深い感銘を受けていたのである。
「それでどうして」
「では一つお話しますが」
「宜しいでしょうか」
「何のことをでしょうか」
「我々は貴方をこうして迎え入れてますね」
「このことをです」
 そのことを話すというのであった。
「まず。ここに来られた人間の方は貴方が最初ではありません」
「過去にも何人かおられま
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