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ミョッルニル
6部分:第六章
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んでさえいた。するとその足元から。激しい音と女の叫び声が聞こえたのだった。
「女の声!?」
「やはりな」
 怪訝な顔をするシャールヴィに対してロキはまたしても納得した顔であった。
「姿を消していたのだな」
「ロキ様の予想通りですか」
「そうだ。そして見よ」
 シャールヴィに対して見るように言う。
「足元をな。そこにあるのは」
「なっ、あれは」
 降り立ったトールの足元に二人の女が倒れていた。そのあまりもの大柄さから彼女達もまた巨人であることがわかる。とりわけそのうちの一人は。
「あの女は」
「河にいた女か」
「そうだ」
 ロキはその女を見下ろすトールに述べた。
「ギャールプ。やはりこいつだったか」
「ゲイルレズの娘がまたか」
「もう一人もだ」
 ロキはまたトールに告げた。
「この女の名はグレイプ」
「グレイプ?」
「この女もまたゲイルレズの娘だ。二人でここで御前を倒すつもりだったようだな」
「ふん、小細工ばかりしおって」
 トールは既に事切れている女巨人達を見下ろしつつ言い捨てた。
「今度は何をするつもりだ」
「今度はゲイルレズ自身が仕掛けて来るだろうな」
 ロキはこう予想を立ててきた。
「娘達を倒されたうえはな」
「そうか。ではこちらも本気で行くとしよう」
「トール様」
 シャールヴィがトールの側に来て彼に声をかけてきた。
「どうした、シャールヴィ」
「ミョッルニルと力帯は持っていますから」
 緊張に満ちた顔でトールに告げるのだった。
「御安心を」
「いざという時はか」
「はい」
 またしても真剣な顔で答えてきた。
「ですから行きましょう」
「出す時は今ではないがな」
 ロキはここでは二人、とりわけトールの血気を静かにさせた。
「あくまでいざという時だ。いいな」
「ゲイルレズが何かした時か」
「そうだ。しかもだ」
「しかも」
「手袋は持って来ているな」
 一応念押しのようにトールに尋ねてきた。
「あの鉄の手袋は」
「うむ」
 トールの持ち物の一つである。ミョッルニルを持つ時に常にはめているものだ。当然今回もそれを持って来ているというわけなのだ。

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