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ミョッルニル
4部分:第四章
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お使い下さい」
「わかった。それではな」
「はい」
 あらためて石をトールに対して差し出す。トールがそれを受け取るとすぐにそれをギャールプに向かって投げた。石は勢いよく一直線に向かうとそのまま彼女の頭を直撃した。巨人はそれで思いきり倒れ込むと何とか立ち上がりほうほうの体で逃げ去った。しかしトールも無事では済まず石を投げたことによりバランスを崩しロキとシャールヴィを己の身体に掴ませたまま河の流れの中に流されてしまった。
「おい、トール!」
「このままでは僕達!」
「わかっている!」
 トールは慌てて自分に声をかけてきた二人に対して応える。しかしその間にも急流の中に流されていく。最早一瞬の躊躇も許されなかった。
 咄嗟に上にあったナナカマドの木を掴んだ。その瞬間に力を込めて身体を河から引き上げさせた。無論ロキとシャールヴィも一緒だ。これで何とか助かったのだった。
「何とか助かったな」
「うむ」
 河から上がったところでロキがトールに対して応えた。三人は何とか無事だったのだった。シャールヴィも口から水を吐き出しつつそれでも無事だった。
「どうやらゲイルレズは本気だな」
「ああ、そうだな」
 ロキは立ち上がりながらトールの言葉に対して頷いた。
「このまま館に入っても只では済まんな」
「予想通りだな」
 最早これで驚く一同ではなかった。とりわけロキは冷静な顔であった。
「おそらく中に入ってすぐにまた仕掛けてくるぞ。覚悟はいいな」
「無論だ。ではいざという時はな」
「その時は待て。いいな」
「ああ、わかった」
 まだ切り札を見せないことを確かめ合いその中でまた歩きはじめた。暫くして巨大かつ重層な城を思わせる館が見えてきた。入口には巨人の若い兵士が立っていた。トールは彼に対して雷を思わせる周囲を圧する様な低くそれでいて響き渡る声で告げたのだった。

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