第四章 誓約の水精霊
第六話 凍りつくもの
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の女と話しをすると、胸が切り裂かれるような、鋭い痛みを胸に感じた……。
恋多き女であると自他共に認める自分だ……原因は分かっている。
自分は恋をしているのだ……。
彼に……。
エミヤシロウという男に……。
「はぁ……」
もちろん今まで恋したことは何度もあった。年上も、同い年も、年下も……いろんな男と付き合ったことがある。そのどれも楽しかったし、面白かったし……胸も高鳴った。
それが恋だと思っていた……なのに、違うのだ。シロウは違うのだ。
もちろん楽しいし、面白いし、胸も高鳴る……だけど違う、それだけじゃない……。
痛いのだ。
苦しいのだ。
胸が……心が……。
あたしが今まで経験してきた恋愛は、いつもコントロール出来ていた。主導権はいつも自分。振り回すのがあたしで、振り回されるのは相手。最初は一人で手一杯だったが、今では六、七人を片手であしらえるまでになったのに……。
シロウは駄目なのだ。
シロウはあたしの思い通りにならない。振り回すはずのあたしが、気付けば振り回されている。その結果、初めての感覚、経験に振り回され、今までの生活が次第に崩れて行った。おかげで、付き合っていた男子達とは段々と疎遠となり、自然消滅してしまった。それに関しては、全く気にしていないのだが……。今までの自分との齟齬に、自分のペースが掴めなくなった。
だから、タバサが実家に帰ると言った時、チャンスだと思ったのだ。
少しでも学院……違う、シロウと離れることで、自分のペースを取り戻したかったのだが……。
「まさかあなたの実家が、トリステインじゃなくって、ガリアだったなんてね……」
オスマン氏に、タバサが国境を越えるための通行手形を発行した際に知った事実について、独り言のように呟いたが、やはりタバサは答えなかった。元々答えを期待している訳ではなかったので、気にはならないが……。
「……ま、いっか」
タバサとは確かに友達だが、それは何でも話し合うような関係ではなく、着かず離れずの関係だ。話したくないことなら、無理矢理聞き出そうとは思わない。しかし……
(訳有りなのは、確実みたいなんだけど……ね……)
キュルケは気付いていた。タバサの視線の先の本は、自分が知る限り一枚としてめくられることは無かったことを。それを指摘することは無かったが、代わりにタバサを抱えると、膝の上に乗せ、構ってやることにしたのだ。
今から行くタバサの故郷たるガリアは、政治に興味のない自分でも、内乱の危機を孕んでいるという噂を耳にするほどだ。そんな国に、いつもとは違う様子のタバサと共に向かっている。そのことに対し、あまりいい予感はしない。
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