第一部
第三章 パステルカラーの風車が回る。
我愛羅
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血がぁああ、俺の血がぁあああああああッッ!!」
中から発されたその、我愛羅のものとは思えぬ声に。サスケは慌てて腕を引き抜こうとした、が、出来ない。砂と我愛羅の腕は余りに力強く掴んできている。サスケは再度「千鳥」を発動し、砂を散らせた。
「うわぁああああああああッッ!」
千鳥の雷が伝わったのだろう、中の我愛羅が悲鳴をあげる。必死の思いで腕を引き抜き、後ろに向かって跳躍すれば、中からは青の紋様が走る砂色の巨大な腕が伸びていた。
「――!?」
「おい、我愛羅がッ」
「――あそこだ!」
同時に聞こえてくる二つの声。テマリとカンクロウだとわかった。痛む腕を押さえ、サスケはがくりと地面に両足をつく。ばたん、と音を立てて地面にぶつかった砂色の腕がするすると砂の殻の中に戻っていく。カンクロウの畏れに満ちた声が耳に入る。
「あいつの腕だ……!」
どうもカンクロウの言うあいつは、我愛羅のことではないように聞こえた。サスケの耳に、樹上のテマリとカンクロウの怯えと焦りの入り混じった会話が届く。
「完全憑依体になったのか!?」
「わからない……怪我を負っているみたいだし、今までこんなことは……!」
カンクロウは畏れに満ちた瞳で我愛羅を見つめた。思い出しただけでも寒気がする。初めて見た時にはそれこそ本当に食べ物が喉を通らなくなったくらいだった。何せ、見た目はまるで……
カンクロウやテマリの言っていることについて、サスケは余り理解できなかったが、しかし本能的な恐怖を感じた。砂の殻の中で蠢く、未知の物体に対する恐怖を、本能的に感じ取っていたのだ。
そして、けだものの瞳が砂の殻に開いた穴に現れ、サスケと視線を合わし、強烈な殺気を放ちながら咆哮をあげた。
「……っ!」
ぴきぴきと砂の殻に亀裂が入り、それらはもとの細かい砂に分解していった。その下から、瓢箪を背負った我愛羅の小柄な姿が現れる。
はあはあと荒い呼吸を繰り返す彼の左肩は傷を追っており、血が流れていた。サスケを見つめる瞳には殺気が満ちている。けれどその目は、砂の殻のなかから僅かに見えたあの瞳ではなかった。
「やはり傷が……っ不完全なまま殻が破られたんだ。――カンクロウッ」
「わかってる、じゃんっ」
テマリの声がした。
と同時に、二人が我愛羅の傍に飛び降り、サスケを睨みながら殺すと騒ぎ立てる彼を宥め始めた。不意に苦しみ出して地面に膝をついた我愛羅を抱えたカンクロウが飛び上がり、森の中を駆け去っていく。テマリが振り返ってサスケを見据え、そして直ぐにカンクロウの後を追って大樹の上に飛び上がった。
暫くそれを見据えていたサスケだが、唐突に自分が何をすべきかを悟る。戦闘の疲れが溜まっていたが、今は我愛羅を追う方が大事だ。
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