もう一つの運命編
第6話 「ふたり」と「ひとり」
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…それでもすごかったですから、今回は許してあげます」
「サンキュ」
初瀬は笑った。初瀬のこういう、正の感情から出る表情が、巴はいとしくてならないのだと、彼は知っているだろうか。
「巴ちゃ〜ん。俺には心配なし?」
裕也が恨めしげに巴と初瀬に寄って来た。
「え? い、いえっ。そんなことは。裕也さんもお疲れ様でした。亮二さんに上手く合わせてくださってありがとうございます」
「やっぱここでも初瀬かよ……ま、いいけどさ」
他人に改めて初瀬との仲を指摘されるのは初めてで、巴の両頬は熱くなった。
「そんじゃ第一関門は突破したってことで、いよいよ中に突入するぜ」
軽い調子で言っても、それは巴たちがついに敵地に侵入するという意味だ。
(中には光実さんと舞さんがいる。舞さんは紘汰さんたちが助け出すだろうからいいとしても、光実さんがわたしたちのほうに来たら。それに、あの人の近くにいるオーバーロードインベスが出て来でもしたら)
すると、巴の頭に初瀬の手が置かれた。
「やる前からあんま考えない。プレッシャーになって疲れるだけだぞ」
「亮二さん……けれど」
「なんとかしようぜ。ふたりでさ」
量産型ドライバーを持ち上げた初瀬を見上げ、巴は苦笑して首肯した。
裕也が「見せつけてくれちゃって」と言ったので、巴はまた顔が熱くなったが。
いざ巴たちは、タワーの正門がある長い階段を登り始めた。
階段をちょうど半分ほど登ったところで、先を行っていた裕也が立ち止まった。
「裕也さん?」
訝しみ、階段を見上げれば――
「悪いけど、ここから先は通さないよ」
貴虎に似たスーツを着た呉島光実が、絶対零度のまなざしで巴たちを見下ろしていた。
(わたしと同じ。碧沙のためにがんばってるあなた。でも道筋は交わらなかった。こうして争うしかないなんて)
今度は自分が、と思い、初瀬から量産型ドライバーとアーモンドのロックシードを受け取った。そして、いざ変身しようとした時だった。
裕也が前に出て、腕で巴たちを制した。
「悪い。初瀬。巴ちゃん。あいつの相手は俺にさせてくれ」
裕也の目は光実に固定されている。やらせてくれ、と言ってはいるが、譲る気は毛頭ないらしい。
「――ご存分に。わたしたちは見守らせてもらいます」
「ありがと」
裕也は迷いのない足取りで前に出て、光実の正面に立った。
「今さら何しに来たんだ。碧沙を探すことも救うこともしないで、クズの側に付いたくせに」
「色々言い返したいことはあるが、そっちはとりあえず後で。今日の俺はお前に会いに来たんだよ」
光実は険しい表情のまま訝しむ色を浮かべた。
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