第二十一話。妖精の神隠し
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ら、消える前に。
せめて気分を良くしようとしていた。
消えてしまうのだから、せめて心穏やかなままいなくなるようにしていた。
……消失の痛みは、自分が負えばいい。
妖精は、何も知らずに明るく楽しく過ごしていればいい。
そう、諦めるしかなかったんだ。
『妖精』はロアだから、噂が無くなったら消えてしまう。
でも、『妖精』である彼女は何も知らない……自分の事を『音央』だと思っているから、誰かを消したりする事も出来ない。
もしかしたら『妖精』が消えれば自分は元の世界に戻れるかもしれない、と考えた事もあった。
だけど出来なかった。
______何故なら『妖精』は自分の思い描く最高に素敵な人生を、楽しそうに歩んでいたのだから。
そして、その楽しさと喜びは、自分の中にも流れていたのだから。
だから、そんな彼女を生き延びさせる為には______自分が人を消すしかない。
『神隠し』として、人を消し続ける事でしか『妖精』の存在は維持出来ないのだから。
あの明るい笑顔を絶やさない為に。
自分の分身……自分自身の『希望』を絶やさない為に。
少女は『神隠し』という鬼になる事を選択したんだ。
それがこの『妖精の神隠し』という都市伝説______だと言うのなら。
俺はその都市伝説を……。
「変えてやる!」
「えっ?」
「変えてやるよ!
どちらかしか幸せになれないような物語なんてそんなの認めない!
そんな物語はみんな俺が変えてやる!」
「も、モンジ?」
「……は、疾風さん?」
突然大声を上げた俺に驚いたのか喧嘩を中断して俺の方を見つめる二人。
俺はそんな二人の視線を感じつつ、言葉を続ける。
「本物じゃないから?
希望の存在だから、自分はどうなってもいい?
……ふざ、けるな??」
『そんなの俺は認めねえええええ??』
「うおおおおお??」
大声で叫びながら俺は体を動かす。
肌に大量の刺が食い込んできた。
このまま無理矢理動かして、歩けば大事な血管すら傷つけて俺の体は修復不可なダメージを負ってしまうかもしれない。
だけど、それがどうした!
目の前で泣いてる女の子がいる、それだけで自分の体の事なんてどうでもよくなる。
傷ついた女の子がいる、それ以上の辛さなんてないのだから。
ヒステリアモードが続いているせいか、何がなんでも目の前にいる女の子を助けたい!
そう、思える。
いや、違うな。目の前にいる女の子だけではない。
俺の背後にいる『神隠し』の少女も俺は助けたいんだ!
俺が救いたいのは、『音央』なんだから。
だから俺は……。
「俺は怒っているんだ、音央! どっちの音央にもだ??」
「っ??」
「っ??」
同時
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