第二十一話。妖精の神隠し
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葉なんか見つからない。
どうやって声をかけたらいいのか解らない。
だから俺は行動に移す。
言葉で現せなくても気持ちで現せる事もあるから。
だけどさらに近づこうとした俺に、両サイドの壁だけではなく四方八方の壁から伸びてきた茨の蔦が立ち塞がった。
これ以上一歩たりとも進ませないというかのように、念入りに、凄まじい力でぐるぐると俺に絡みついてくる。
「だから……だから、来ないで、モンジ……あたし、気づいたの」
ボロボロ、と大粒の涙が音央の瞳から溢れ落ちた。
「あたし……あたしは、本物の音央じゃないのよ」
音央がそう言った瞬間。
辺りの全ての茨が。庭園の花々が。
全て真紅色に染まった。
『妖精の神隠し』。
それは、妖精が人間の子供と妖精の子供を入れ替えるという話。
一晩、行方不明になった音央は、周囲の人々からまるで『別人のようになった』と言われ、噂された。
そう。その噂こそが今回の本当の原因なんだ。
無事に帰ってきた音央は『妖精』で。
本物の音央は『妖精の国』にいる。
それが実現してしまったんだ。
つまり、みんなの前で明るく過ごす『薄い茶色の髪』をした、アイドル的な存在である『音央』こそが『ロア』であり。
______『本物の音央』は……『神隠し』として夢の中でずっと過ごしていた方だった、というのが今回の『神隠し』事件の真実だ。
「どうして偽物のあたしの為に、あたしなんかの為に、ずっとずっと……本物のあんたが、本物のくせに『神隠し』なんてやっていたのよ??」
泣きながら絶叫する音央。
俺の後ろからも鳴き声が聞こえる。
「それは……だって……」
「だって、何よ?? 大好きな人、大事な人を消し去ってまで、なんであたしみたいな化け物の為に人を消したりしてたのよ??」
前門の『音央』、後門の『神隠し』。
俺を挟んでの、音央と音央の喧嘩。
美少女二人に挟まれるなんて、ヒステリアモード時の俺には嬉しい至福の時間だが……いかんせん、シリアスな空気のせいか素直に喜べる状況ではないのが残念だ。
「それは……貴女は、私の希望でしたから」
そう、涙声で告げる『神隠し』の音央。
「き、希望?」
『妖精』の音央は意味が解らないというように疑問気味に言った。
だが俺はその意味に気づいた。
気づいてしまった。
______そう、多分、希望だったんだ。
二度と人間の世界、外の世界に出る事が出来ないと理解した音央は、夢の中からずっと『妖精』の事を見続けていた。同一人物である以上、好きになる人も嫌いになる人も一緒だったのだろうからな。
だか
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