第二十一話。妖精の神隠し
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く閉ざした絶対の空間……疾風さんを敵とみなしたら、無限の茨に襲われます!」
「ああ、解った! ありがとう」
外敵とみなすならみなせばいい。
そんな程度じゃ俺は止まらない。
そんな思いで、俺はさらに一歩、足を踏み入れた。
シュルシュルと伸びてきた茨によって腕に傷が付けられるが……。
こんなもの、アリアや一之江から受ける痛みに比べたら全然大した事はねえ!
桃まん買い忘れただけで銃撃された前世や突然背中を刃物で刺されたりしている今の俺の日常を舐めるなよおおおお??
「いや……嫌だ、来ないでよ??」
うっ、涙目になってそんな風に言われると結構来るな。精神的に。
「なんかその言い方だと暴漢してる犯罪者みたいに聞こえるからやめてほしいな」
「う、うっさいバカ!」
そんなやり取りをしながらも、絡みついてくる茨の蔦の中を気にせず歩いて音央に近づいて行くと、蔦の刺によって腕や頬、足、胸といったように全身を切られるが、そんな事は大して気にならない。
______それくらい、俺は怒っているんだ。
「っ、バカっ、ち、血まみれになってるじゃない!」
「そうしたのも君だろ?」
我ながら意地の悪い言い方だなぁ、なんて思う。
だけど俺は彼女に解ってほしい。伝えたい想いがあるんだ。
俺の想いを知らない彼女は俺を睨み、唇を噛みながら泣き出しそうな顔をしながら叫んだ。
「どうしてよ! どうしてそこまでして、あたしなんかを!」
「なんかって。ファンがいるくらい皆んなから好かれているじゃないか」
「なんかはなんかよ! あたしが、あたしが、皆んなを消したかもしれないんでしょ?」
音央のその言葉に、俺の後ろで見守っていた『神隠し』の少女が息を飲むのが伝わってきた。
「先生も、パパも、ママも、お友達も……皆んなみんな、あたしが夢を見たせいでいなくなっちゃたんでしょ??
そして、モンジも……!」
そうか。気づいてしまったのか音央は。
……いや、薄々感じていたのかもしれない。
自分の身の回りの大事な人がいなくなっているという事に。
周りから人が消えていけば、そりゃあ違和感も残っただろう。
いくら『世界』が上手い事修正しても、人の『心』にある欠落まで綺麗に埋める事は出来ないのだから。
それに……音央は覚えていたんだ。
夢を見て、その人と一緒に過ごした、という事を。
楽しく過ごして、いなくなったら悲しかったという気持ちを。
記憶は調整出来ても、気持ちまで『世界』は弄れなかったんだ。
「だから、だから消えてしまえばいいのよ……あたしなんて……あたしなんて、いなくなっちゃえば、いいのよ??」
何て言えばいいのだろう?
何て声をかければ音央を救えるんだ?
かける言
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