閑話 第三話
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『努力しても天才は超えられない』
クレアは、それらに類似する言葉全て嫌いだった。努力を頑なに信じているから、という訳ではない。単純に、それらの言葉は言い訳だからだ。
天才とは何も経験していなくとも玄人、それ以上の技量を持った人たちのことを言う。だが、クレアに言わせれば天才とは凡才よりアドバンテージを得ているだけである。もちろんそのアドバンテージの差が絶対的だから天才と呼ばれているのは理解している。だけど、努力でその差を埋められないというのは理解できなかった。
努力しても天才は超えられない。当たり前だ、天才だって努力をしているのだから。並大抵の努力をしていても一生差は縮まらない。当然の理屈だ。
つまり、クレアはこう言いたい。「限界まで努力したことあるの?」と。
クレアの言葉に万人は否定はしないが、肯定もしない。なぜなら、限界まで努力した人間なんて人類史上存在するはずがないからだ。
努力とは無窮である。限界なんて存在しない。だから限界まで努力することはできない。
逆に言えば、天才が努力する分を更に上回って努力をすれば超えられる道理だ。努力に限界なんてないのだから、いくらでも努力のしようはある。ならば、天才を超えられるほど努力すれば、超えられる。
簡単な話なのに、誰もが天才は超えられないと言う。それは甘えだ。努力することから逃げて、天才は超えられないなんて知ったかぶった体でのたまうのは傲慢だ。努力から逃げたような奴が努力を語るな。死ぬまで限りなく努力して、それでも超えられなかったら、そう言え。努力してない奴が言える言葉じゃない。
超えられない壁があるのなら、壁を掘り進め。掘れないなら足がかりを作ってよじ登れ。それでもダメなら地面を掘って抜けろ。万策尽きるまで考えろ。限界なんて無い、限界だと感じてるうちは限界じゃない。無理なんて言ってる暇があれば考えろ。
天才も努力するなら二倍三倍の努力をしろ。限界なんて無いのだから。
努力は裏切らない。努力は報われる。努力は無窮だ。ならば、死ぬまで努力しよう。それで超えられなかったら、私が責任持って『努力しても天才は超えられない』と言おう。
ゆえに、クレア・パールスは努力する。
◆
迷宮の弧王。階層主と呼ばれるそれは、名に恥じずその階層に出現するどのモンスターより遥かに上回る力を有しているモンスターだ。一番弱い迷宮の弧王でもLv.2相当の力を持つ正真正銘の化け物が、私の目の前にいる。
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