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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていた。
閑話 第三話
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瞬で粉砕された音がくぐもってバックパックの中から発せられた。多少の魔石が入っていたけど、知るかそんなもん。まずは身軽になることが先決だ。

 次に逃走経路だ。蟻が出現したポイントの関係上、六層へ引き返すことはできないと考えていい。丁度蟻の肩越しに六階層との連絡路が見えるのが現状だ。無策で巨体の下をくぐるくらいなら未踏の道を選ぶ他ない。
 逃走開始から五秒後に、右手に曲がり角が見えた。ここしかない!

『ギィッィイィィィ!!!』
「うわぁっ!!??」

 あと少しで追いつかれそうになった瞬間、巨大な顎は閉まった状態で私の脇腹目掛けて振りぬかれた。咆哮につられて振り向いた私が見たものはすでに振りかぶっている状態で、私は反射的に転ぶように身を投げ出した。

 ブゥゥゥン!! と皮一枚のところまで顎によって空気が抉られた。背面の服が僅かに引っ掛かったけど、あまりの勢いだったせいで一瞬で千切られただけに留まった。もし勢いがなければ釣られてしまい壁に叩きつけられたことだろう。
 ガンッ! と壁に顎が激突した隙を突いて、僅かな痛みを訴えてくる体を地面から引き剥がして角を曲がった。

 そして、飛び込んできた光景は、三人の冒険者の後姿。

「いぃっっ!!??」

 最悪だ。私が怪物進呈(デス・パレード)を仕掛けようとしているようなものじゃないか。
 私の悲鳴になっていない悲鳴に気づいた三人は鋭く翻ったけど、今は私の背後にクルセイド・アントはいない。丁度曲がり角のせいで姿が隠れてしまっているのだ。

「逃げてくださいっ!!!!」
「あぁ? 何事だ?」
「か、階層主、階層主が私を追いかけています!! 早く逃げ───」
「階層主だぁ? 丁度良いじゃねぇか、俺たちも探していたところだ。おいお前ら、準備しろ」
『おう!!』

 な、まさかあの階層主をたった三人で倒せるとでも言うのか!? いくらなんでもそれは無茶だ! 本来階層主は複数集団(レイド)戦で処理するレベルのモンスターだ。あんな少人数で退けられるはずがない! 
 だけど、もしかしたら彼らはLv.2の冒険者なのかもしれない。そう考えれば、Lv.2相当のモンスターであるクルセイド・アントと交戦する分には問題ない。

「お、お願いします!」
「おうよ、任せな」

 背中に吊っていた得物を手に取ったリーダー格の冒険者の隣を走り抜き、止まることなくそのまま私は逃げ続ける。階層主と戦うとなればどれほどの範囲まで及ぶのか皆目検討つかない。ならとにかく遠くへ逃げるに限る。

『ギィイイイイ!!!』

 遂に迷宮の弧王が曲がり角から姿を現した! 肩越しに振り返った私の目線と蟻の複眼がぶつかるが、ふと複眼が逸れた気がした。私と蟻の間に仁王立ちする三人の冒険者が目に留まった
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