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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていた。
閑話 第三話
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らせた。

「いっ、いやぁっ!!??」

 さっき咄嗟に出た悲鳴とは比べ物にならないくらい小さなものだった。あまりに身分不相応の相手を前に、全身が硬直してしまったのだ。喉からひくっと奇妙な音が漏れ、本能がけたましく警鐘を打ち鳴らす。
 ギチギチと顎の噛み合わせを確かめるたびに、足を地に縫い付けていた見えない根っこが解けいき、蟻の脚が一歩踏み出たところでようやく私の両足が動いた。

『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!』
「いやっ、来ないでええええ!!!」

 私の全身全霊のお願いを嘲笑うように蟻は私が背を向けて走り出すのと同期させ、その六本の脚で地を揺るがし突進を開始した。その巨体に加え見るからに堅牢そうな甲殻を纏うクルセイド・アントの体重は推して知るべし、あれに踏まれるだけで簡単に潰れてしまうだろう。
 鋸状に切り立った巨大な顎、あれだけの体重を容易に支える脚、刃から身を守る堅牢な甲殻。どれをとっても七層で出現するのはおかしいくらいだ。それが今、私の背後から追ってきている。そう考えただけで両足を(もつ)れさせそうだ。

 Lv.2相当のステイタスも備えているクルセイド・アントと、Lv.1の中堅より少し上くらいのステイタスしか持っていない私が追いかけっこすれば、どちらが勝つか一目瞭然だ。一直線の徒競走に持ち込まれた瞬間、私の負けは確定してしまう。とにかく曲がり角へ逃げ込まなくてはならない。

(まさか初めて来る七層で鬼ごっことか最悪にもほどがあるわよっ!?)

 地の利は向こうに奪われているというだけでも不利極まりないのに、こちらはマップすら解らない即ち逃走経路が解らない。雑魚キャラVS最強キャラの戦いで雑魚キャラに大量のハンデを掛けた試合のようなものだ。むしろ私が勝つ可能性はゼロ───。

「ここで死ぬわけにはいかないのよッッ!!!!」

 負に思考が走りかけた自分に叱咤を、追いかけてくる蟻に強烈な宣戦布告を叩き付けた。まあ、すでに襲われた状態で宣戦布告というのはおかしな話だけれども。

 勝てる可能性がゼロ? なら作れ。無理なんて考えてる暇があれば勝機を見出す方に思考を回せ。恨んでも現状は変わらない、なら現状を変える術を探せ。

 よし!! パニクった頭が調子を取り戻せてきた!! 現実逃避なんざしてる暇があるなんて、私はずいぶんと余裕だな! それを全部思考に回せってんだよこんちくしょう!!

 まずはバックパックだ。こんなもの背負っていたら逃げれるものも逃げれない。中に幾つか回復薬(ポーション)が入っているけど、嵩張るだけ邪魔だ。両肩を広げて腕を後ろに伸ばすだけで簡単にバックパックは私の背から離れ地面に投げ出された。直後にクルセイド・アントの脚に踏みつけられ、幾つもの物資が一
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