第十六話
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レイナを中に招待した。
お邪魔しますと断ったレイナは、ナチュルの工房の全貌を見て息を呑んだ。
壁は薙刀で作られているのか、と思うほど壁に立てかけられていたのだ。鍛冶のことには神経質になると言っていたのは本当のことで、入って右手から全長の長さの昇順に立て掛けられている景色は薙刀専用武器庫のようだ。
壁のほとんどを薙刀に使っているせいで鍛冶に使う工具を大きな棚に収納しており、中途半端な位置に置かれていた。置く場所はアレだが、棚の中はきちんと整理されており、すぐにでも鍛冶を始めることが出来るようにされていた。
工房入って一番奥に大きな炉がセットされており、傍に鋳鋼製の金床があった。そこから数歩移動すれば羊皮紙や羽ペンが乱雑に置かれている製図台があり、その床には沢山の丸められた羊皮紙が散らばっている。
自らも大雑把と評するナチュルの工房は、鍛冶を行うには精緻すぎるほどで、その他は大雑把という具合だった。
「お茶とか出せないけど、勘弁してね」
レイナが工房の全貌に呆気にとられている内に倉庫から椅子を引っ張り出してきたナチュル。工房の中央に二つ向かい合わせて椅子を置いたナチュルは、入り口の鍵をガチャンと音を立てて掛けた。
「さて、それじゃ、話してくれるかしら」
◆
正面にこじんまりと座ったレイナと、足を組んで座る私。レイナが幼いというのもあり、さながら私が怒っている絵に見えるが、実際は違う。
向かい合って座ってから少しの沈黙が工房を包み、外から聞こえる鍛える音が響く中、レイナは意を決したように柳眉を上げて、可憐な唇を動かした。
「これから言うことに、一つの嘘もありません。そのことを信じてもらえない限り話が進まないので、確認させてください」
背丈の関係上、じっと上目遣いで見つめてくるレイナ。その瞳には、あの時見た底知れない静謐さは無い。ただ一点を目指して進むような力強い光は同じだった。それが、あの花たちを瞬殺してのけた少女と同一人物であることを証明していた。
首肯で返すとレイナは僅かに目を伏せ、声を潜めるようにして、言った。
「率直に言います。私は、クレア・パールス本人です」
私は大体のことに対して大雑把であるということを自覚している。レイナがLv.2のトロールを無傷で倒したことに言及しないのもそうだし、会話もそのうちに含まれていて、回りくどい説明など嫌うタイプであるのも自覚している。だからレイナが単刀直入に言ってくれたのは助かったけれど、今回に限って回りくどい説明の方が良かったと思った私だ。
ぶっ飛んだ発言をしたレイナになんて反応すればいいのか解らず呆けていると、レイナは少し儚げに微笑んだ。
「いきなり歴史の偉人を名乗っても驚くだけですよね。まず証拠を出しましょうか」
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