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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていた。
閑話 第二話
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「それでクレアが傷つくのは、嬉しくないことだよ? クレア」

 初めて出会ったときからクレアは本当に見違えるくらい成長した。背丈も伸びたし、髪も伸ばしたし、胸も大きくなって、最初はダンジョンから帰ってきたら気絶していたのに今では自分で晩ご飯もお風呂も入れる気力は残せているし。
 でも、それら全て、クレアがその身を傷つけて得たものだ。今も寝てるクレアのお腹に大きな青あざがあるのも知ってる。左肩に切り傷を作ってるのも知ってる。手のひらにたこを作ってるもの知ってる。
 十三歳という幼さからずっと怪我を負って気絶するくらい疲れて帰ってくる毎日を送る日々が、本当にクレアにとって喜びなのか私には解らない。

 私がこっそり働こうと思っても、どこで知ったのか解らないけどやめて下さいお願いしますと泣きそうになりながら懇願してくるし、冒険者をやめないかと聞いてもやらせてくださいお願いしますと泣きながら懇願してくるし……。

「もう少し親の気持ちを考えて欲しいなぁ」

 窓から差し込む月の光が、むずがるクレアの寝顔を優しく照らしていた。



 いつもの時間に起きたら、クレアはまだ寝こけていた。私が起きた頃にはすでに身支度を済ませてるくらいだから、昨日私が言ったことを守っているようだ。

「まったく、可愛いなぁ」

 あどけない寝顔を晒す我が子の頭を一撫でしてから、体をぐっと伸ばして脱力、瞼の裏に燻る眠気を誤魔化しながら布団から這い出て顔を洗って朝ごはんの用意をする。

 数十分が経って丁度朝ごはんが出来た頃にクレアが小さく呻きながら起きてきた。

「おはようクレア。顔洗ってきなよー」
「はぁい……ふぁ」

 ぼさぼさと跳ねた髪の毛を掻きながら寝ぼけ眼で返事をしたクレアから大きな欠伸が漏れる。三年間一つ屋根の下で暮らしていたけど、片手で数えられるくらいしか見たことがないクレアの姿に自然と笑みを零しつつ、ちゃぶ台に簡素な朝ごはんを並べる。

 クレアが戻ってきたら一緒に食べ始め、未だ寝ぼけているのか口数が少ないけれど会話を交わしつつ食べ終わる。

「この後私買い物に行くけど、クレアも付いて来る?」
「私は……ふぁ、二度寝します」

 本当は付いて来て欲しかったけど、今のクレアは三年分体に貯まった疲労にやられている。無理を言わさず寝かせてやろう。言ってる傍から布団に吸い込まれるように這いずっていくクレアだった。

「お昼になったら起こすからねー」
「ありがとうござむぎゅ」

 布団にとっぷしながら言わないでよ、と苦笑いを零し、早くも規則的な寝息が聞こえてきたところで素早く身支度を整えて、立て付けの悪い扉も空気を読んでか音を立てずに外に出かけた。

「これで大体揃ったかな」

 クレアが稼い
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