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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていた。
第十三話
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ナチュルが腕まくりをし、八相の構えを取る。元手を前足側の腰骨、もう一方の手を後ろ足側の耳の横に置き、薙刀を立てた構えは、薙刀の聖地極東で編み出された最も攻撃的な構えだ。私はそんな立派な構えを知るより前に超拙い我流の構えを身に付けちゃったからしないけど。

 薄い燐光に照らされる影は二つ。通路の奥から完全に現れ、モンスターの姿が露になる。ごつごつとした体皮は黒一色、例外的に双眸は真っ赤に輝き不気味さをかもし出している。犬というには些か体が逞しい四足獣、ヘルハウンドだ。

 このモンスターが一般的に上層と中層を別つシンボルとして知られている。十三階層ならばもう少し奥まで進んだところで出現するはずだけど、まあ気にしない。
 実はこいつ、犬の見た目をしているくせにブレスを使ってくるのだ。上層までは生身で突撃しかしてこないモンスターだけど、ここ十三階層から下の中層になると明確な遠距離攻撃という術を手に入れたモンスターが出現する。そのためレベルが上がりたてで己の腕を過信している冒険者ほど、このヘルハウンドに焼き殺される。

 私も何度こいつにトラウマを植え付けられたことか……。具体的に初見のときに三頭に囲まれたりとか、進んでいるときに背後からいきなり炎を吐かれたり……。お陰で上層では学べなかった『視界を広く持て』を体で学んだから良かったんだけど。

 さておき、そんな訳でヘルハウンドは遠距離からの炎ブレスを得意とするモンスターだ。その炎はまがいなく本物の炎だから、照射されれば人間丸焼きの完成だ。だからほとんどの冒険者は十三階層より下を潜るときはサラマンダー・ウールを購入するのだ。まあ、慣れてしまえばヘルハウンドがいつブレスをしてくるか解るから、そもそもブレスを受ける危険が無くなるんだけども。

「右のやつをお願いします!」
「あいよ!」

 すかさず飛び出した私は薙刀を槍のように構え突進、自分が受け持つヘルハウンドに向けて突き出す。こいつらは接近を許した場合、絶対に炎ブレスをしない特徴がある。だからひとまず近接戦闘を仕掛ければ焼かれる心配はない。もちろん複数体相手取るときは注意は必要だ。
 突き出した刃をヘルハウンドは楽勝楽勝とばかりに軽やかに右ステップ、反転した後に屈強な足の筋肉を爆発させて飛び掛る。

 はい、お疲れ様です。

 全く力を入れず突き出した姿勢から、体の中心を動かさないイメージで軸足を踏ん張り、思い切り体を回転させる。

『ぎゃん!?』

 小柄な私が出せる最大の遠心力を刃に乗せて、空中に飛び上がっているヘルハウンドの腹を一閃。バランスを崩されたヘルハウンドは噛み付くことすらままならず私の隣にべちゃりと着地、以後動かぬ屍と化す。
 中層になると以前戦ったリザードマンと同じように、モンスターがある程度思考す
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