第十三話
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ー・ウールいるかしら?」
「いえ、大丈夫です。というか、買うと私破産してしまいそうです」
「さすが私が見込んだだけあるわ。その意気よ」
サラマンダー・ウールというのは精霊が己の魔力を編み込んで作成した《精霊の護布》と呼ばれている防具の一種だ。精霊が得意とする魔法属性に応じてその性能を変えて、火精霊の場合は火耐性が飛躍的に上昇する。その性能の良さに応じて値は張るものの、中層に潜る冒険者ならば誰もが欲しがる一品の一つ。
その理由は十三、十四階層から出現するようになる《ヘルハウンド》という犬型モンスターである。
まあ詳しいことはその場になったときにしよう。
必要な装備を整えたところで準備室を出て、ダンジョンの入り口《大穴》がある通路を並んで通る。唯一の出入り口だから余程の深夜でなければ冒険者の行き来は常にされており、昼の前後となると入り口に着くまで凄い人ごみの集合と化す。
上を見上げれば一面の壁画が描かれており、安全地域セーフティエリアであることを感じさせる。
それにしても二十階層か。自分のレベルに全くそぐわない階層に足を運ぶのは前世を踏まえてかなり久しい。あ、私の場合レベルの差が1であれば全く問題ないと思ってるから十四階層辺りはカウントされません。
薙刀について語り合いながら大穴に入った私は気付かなかった。すぐ後ろに白髪の少年と、巨大なバックパックを背負った小人族の少女が並んでいたことに。
◆
さすが《戦える鍛冶師》と名高い【ヘファイストス・ファミリア】の一員。久しい戦線のはずなのに薙刀の振るい方は衰えておらず、駆け出しの私に経験値が貯まりやすいように立ち回ってくれている。
お陰で何の苦もなく十三階層に到達した。ソロだったらもう少し時間を掛けないと辿りつかないからね。両手で数えられるくらいしかパーティを組んだことがない私にとって新鮮な感覚だ。
「レイナちゃん本当に駆け出し? 私より洗練されてない?」
「冒険者になってから毎日ダンジョンに潜ってましたから、この辺りの階層なら慣れてますので」
「それにしたって……ねぇ?」
そう言いながらナチュルは背負っているバックパックを担ぎ直す。せっかく本来の相棒たる薙刀を手にしたから、【撥水】変則ver.を練習している。かっこいい言い方をしてるけど、要するに『魔石を切り取る所作』を最適化できるようにしているだけだ。これなら【撥水】を仕掛けられない中層モンスターにも仕掛けることが出来る。だってただ単純に切り取るだけだからね。
さて、そんな他愛ない会話を交えながら洞窟を装う一本道を歩き続けて数分。それまで動いていた私たちの足と口がぴたりと止まった。
「早速おでましね」
バックパックを道の脇に乱雑に放り捨てた
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