第十三話
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う。
ナチュルは何の根拠のない確信を得た。自分が鍛冶師になったのは彼女と出会うためだと。彼女と関係を持てば、きっと何かが変わると。
新人鍛冶師が新人冒険者と関係を築くというのはよくある話だが、上級鍛冶師が新人冒険者と関係を築きたいと思うという話は滅多に聞かない。
名も知らぬ少女を探すのはさすがに骨が折れるので、お触書に反したことを利用して莫大な賠償を吹っ掛けて、自分の下に相談しに来るように仕向けた。
思惑通りやって来た少女と話してみれば、自分の想像以上に薙刀に関して情熱を持っており、更に薙刀を打ってくれる人が少なくて残念だとまで言ってくれた。
少女レイナを逃す手は無かった。自分に人を見る目があるとは思っていないが、自分の予感が激しく騒いでいた。レイナはいずれオラリオ全土、いや、世界を超える激震を与える冒険者になると。
ナチュルは上級鍛冶師にも関わらずお得意様がいないという状態だったが、今回は幸いである。
レイナを自分のお得意様にしよう。自分の打つ薙刀を使わせて、彼女の名が広まると共に彼女が使う薙刀に皆が注目する。そうすれば薙刀の魅力を感じる人が増えるに違いない。
駆け出しというレイナがLv.2のトロールを無傷で倒したという事実が、ナチュルの予感に根拠のない信憑性を上塗りした。
何なら今すぐ無償で自分が打った薙刀を使わせてやりたいところだが、それはダメだ。駆け出しが武器の威力の味を占めてしまったらせっかくの才能を腐らせてしまう。きちんとレイナの背丈に合った上で最高の薙刀を打ち続ける。
レイナの薙刀の捌き方や戦闘スタイルをじかに見つめつつ、彼女専用の薙刀を作る素材を集める。
それら煩事をいっぺんにクリアするには、彼女に冒険者依頼を吹っ掛けるに限る。
ナチュルは高鳴る胸に心躍らせながら、目の前にいる黒髪の少女に免罪符を言い渡したのだった。
◆
上級鍛冶師ナチュル・ヴェリルに駆け出し冒険者に出す難易度ではない冒険者依頼を指名で発注された、その翌日。
「どうも、早いわね」
「遅れて来たら何されるか解ったものじゃありませんから……」
「はははっ、鍛冶師は武具を打つときは神経質になるけど、その分他には大雑把なの。三十分や一時間くらい誤差よ」
その大雑把で何をされるか解らないと言ったんですけどねぇ……。着流しを羽織っているナチュルの即断即決は本当に危ない。主に『やっぱり免罪なし。賠償してね』とか言い出しそうで。
少し話が遡るけど、冒険者依頼を受けるときにエイナから猛烈な反対を受けた。まあ当然だろう。駆け出し冒険者が五階層より下に行くこと自体危険なことなのに、あろうことか中層と呼ばれている二十階層まで潜る
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