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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていた。
第十二話
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無い。しかし、現に少女は無傷で勝利を収めている。

 その原因は少女の所作にあった。初見のはずのトロール相手に最も適する立ち回りをし、瞬く間に追い詰めた姿は熟練の冒険者も顔負けの冴えが窺えた。止めは騒ぎを引き起こすモンスターを片っ端から潰して回っていたアイズに奪われたものの、彼女が登場しなくとも問題なく倒せていただろう。
 格上相手に怖気づくどころか、むしろ上等と言わんばかりに立ち向かうとは、駆け出しあるまじき行為だ。

 これだけ不自然な点があればオッタルもレイナの正体を疑うが、しかし、駆け出しにあるまじき行為を淡々とやってのけた人物を知っているだけに決め付けることはできなかった。

 アイズ・ヴァレンシュタイン。八歳で冒険者になり、その一年後に階層主を屠った世界最速記録を持つ少女。彼女もその幼さに全く似つかわしくない冷静さと凄絶さを兼ね備えた腕で瞬く間にモンスターたちを薙ぎ倒していった。オッタルはその場に居合わせていないため詳細は知らないが、階層主を葬ったその瞬間もアイズという少女は怖気づかず立ち向かったのだろうと想像つく。

 レベルという絶対的差を覆せるほどの才能を秘める人は実在する。ゆえに、オッタルは己が主神の考えも可能性の内だと考慮するし、レイナは天才の一種だったという可能性も捨てきることが出来なかった。
 魂の本質を見極めることが出来るフレイヤに見誤りがあるとは毛頭思っていない従者だが、過去の偉人の魂を宿した人がいるという超次元的な話があるということに腑に落ちない点があるのも事実だった。

「……解ったわ。ご苦労様、オッタル」
「お望みとあらば、幾らでも」

 慇懃に返すオッタルに手振りで重ねて労わると、再び眼下にいるベルに向けて微笑みかけた。

「また遊びましょう、ベル。貴方の色は誰にも穢させないわ」

 恍惚の吐息を零すフレイヤに、頭を垂れ続けるオッタルは静かに瞑目した。



「で、これはどういうことかな? レイナちゃん」

 ロビーに設けられた小さな一室は、目の前に座るアドバイザーさんが醸し出す空気のせいでギスギスしていた。
 子供が遊びで書いたような金額が記されている請求書を片手でひらひらさせて突きつけてくるエイナに、私は引き攣った笑みで答えた。

「じ、実はカクカクシカジカありまして……。ところでエイナさん、今日は天気が良いですね!」
「露骨な話逸らしはいらないから、この請求書の説明をしてもらえる?」

 こ、怖い……怖いよこのアドバイザーさん……! 顔は輝かしい笑顔なのに両目の周辺だけが全く笑ってないよこのアドバイザーさん……!

 事の顛末は一昨日起ったモンスター脱走事件にまつわる話だ。簡単に言ってしまえば、私は例の薙刀の件を【ガネーシャ・ファミリア】に擦り付け
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