1部分:第一章
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スノードロップはあまりにも寒いせいか春にならないと咲かないのだ。無理な話にしか思えなかった。今は言うまでもなく冬である。
「けれどね、お姉ちゃん」
「何?」
リーザはさらに姉に話した。
「若し見つけてきたらね。お金たっぷりだって」
「お金が」
「そうよ、皇帝陛下だから。お金もたっぷりと出してくれるわよ」
「そうしたらおうちもお母さんも」
「ずっと楽になるわよ」
「そうよねえ、それだけお金があれば。お母さんだって」
「ああ、そんなの気にしなくていいんだよ」
ここで奥で家の用事をしていたオリガが二人に言った。
「お母さん」
「こんな冬にスノードロップが咲くわけないじゃないか」
「それはそうだけれど」
「確かにね、お金は欲しいよ」
「ええ」
「それでもある筈のないものを探しに行くなんて馬鹿なことなんだよ」
「けれど森の奥に行けばひょっとしたら」
リーザはそれでも言った。
「あるかも知れないわ」
「森の中かい?絶対に行っちゃ駄目だよ」
お母さんはリーザがそう言ったのを聞いてすぐに止めた。
「どうして?」
「森の中はね、とても危ないからだよ」
「狼とか?」
「それだけじゃないんだよ。怖い妖精まで一杯いるから。だから行っちゃ駄目なんだよ」
「そうなの」
「そうなのっていつも行ってるじゃないか。いいかい」
そして二人に対して言った。
「私はね、あんた達さえいてくれたらいいんだよ。お金は幾らあってもあんた達がいないと何にもならないんだよ」
これは母親としての言葉であった。
「お母さん」
「わかったね、だから馬鹿なことを考えるんじゃないよ、いいね」
「うん」
二人はその言葉に仕方なしだが納得して頷いた。お母さんの気持ちはよくわかったからだ。
「わかってくれたらいいよ」
娘達が頷いたのを見て安心した。その日はそのままベッドに入ってしまった。
だが。そのベッドの中で娘達は話していた。
「ねえお姉ちゃん」
子供達の部屋でリーザはマーシャに声をかけていた。
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