第十一話
[5/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
三度のフルスイングを終え深手を二つ負うトロールは全身を硬直させる。それを逃さず薙刀を肩から引き抜いて、反転しながらトロールの前に躍り出るように飛び降りる。そして小柄な体を弓なりに反って溜めた垂直斬りに落下運動が上乗され、その白刃は何の抵抗もなく緑の体表を走った。
『アガガガガガガガガ!!!!???』
肩の関節ごと断ち切ったのか、左肩がありえない角度に沈んでしまっており、今度こそ血潮が斬った箇所から夥しく噴出した。
貫いた激痛に堪らず棍棒を地面に落とし左肩を抑えたトロールに、無慈悲な追撃を叩き込む。今度は右肩から右脇に掛けての垂直斬り下ろしだ。
これでトロールの討伐は完了だ。巨体には正方形の痛々しい裂傷が深々と刻み込まれており、あとはその正方形を切り取ってしまえばトロールの体から魔石が乖離したことになり、あえなくトロールは灰に還る。
私にはこれが精一杯だ。薙ぎと垂直斬り下ろしと袈裟斬りしかろくな攻撃手段を持たない薙刀はどうしても滑らかな円形を描くことが難しい。突きは許容範囲だけど槍と比べれば一歩劣ってしまう。
更に格上のモンスターを倒すためには敵の最大の弱点である魔石を切り離すしかなく、上記の理由で【撥水】すらままならないため困難を極める。
ならばどうするかと考えれば、おのずと魔石を肉ごと切り離すという考えに落ち着く、というわけだ。尤も前世では【撥水】自体出来なかったから順序的には、魔石を切り離す→もっとスマートな倒し方は無いか?→【撥水】である。
あーあ、せっかくお父さんが誕生日祝いに送ってくれた服が埃と皺まみれだよ……。幸い返り血は浴びてないからクリーニング屋さんに出せば仕立て直して貰えるかな。
戦闘の直後とは思えないほど暢気な考えが頭にちらつきながら、全身に走る激痛に悶えるトロールにせめてもの引導を渡そうと薙刀の柄を引き絞った時だ。
ズパァァァァン!! と、トロールの体が爆発四散した。
それはさながら砲撃のようだった。体を屈めていたトロールの背中、それも魔石があるであろう脊椎から銀の細剣が貫通したのだ。その速度があまりにも速すぎたせいで斬るという概念が置き去りにされトロールの肉体が圧倒的物理量に圧壊されたのだ。
メインストリート中央で炸裂したトロールの血肉の花火を引き起こしたのは、金髪金目の見目麗しい少女だった。そこらじゅうにぼとぼとと空に打ち上げられた血肉が降り注ぐ中、不思議とその中央に立っている彼女にだけは何も当たらない。
女神にも見えるその佇まいも相まって、滑稽な祝福をされているようにも見えた。
「これで最後……かな」
小さく呟かれたその言葉に呆然と笑みを引き攣らせる自分がいた。
アイズ・ヴァレンシュタイン。最強と名高い女剣士。魔力を感じ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ