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ダンジョンに出会いを求めるのは間違っていた。
第七話
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「お、なんやレイナたん、気が変わったんか?」
「いえ、そうではないのですが、少し聞きたいことがありまして」
「おおなんや、レイナたんが聞きたいことなら何でも喋ってあげるで? うちのスリーサイズ? それともうちの好み?」
「──クレア・パールス……さんについて、ご存知ですか?」

 かつての自分の名前にさん付けすることに激しい抵抗感を覚えたが、この時代ではクレアという名前は神に準ずるレベルだ。迂闊に呼び捨てでもしてみれば何されるか解らない。
 ロキは酒が回った赤い顔で「あー」と相槌を打ち、片方の眉を吊り上げて言った。

「クレアたんには勉強させてもろたからなぁ。それなりに会ったこともあるし、知っとるで」
「その、クレア……さんが所属していたファミリアについて──」
「セレーネか」

 喧騒に包まれているはずの酒場が一瞬凍てついたような気がした。しかし現実はレイナとロキ以外この会話を聞いている者はおらず、つまりロキが発した声音がレイナの何かを強く凍えさせたのだ。
 ロキが唯一「たん」を付けない女性、セレーネ。そこに何の意味を込めているのかは、本人以外知る由はない。ロキはその意味を確かめるように口の中でセレーネの名を転がすと、レイナが切り出すその前に先制するように言った。

「やめとき。何をしたいか知らんけど、やめとき。レイナたんだから少ーし口を滑らせたるがな、セレーネは完璧な行方不明や。神友のうちにもファイたんにも言わず去りおった。せやから、やめとき」

 それから以降ロキは何も無かったようにメンバーたちの騒ぎに飛び込み、レイナは何も言えず、ただ乾いた喉を潤すためにコップを上げ下げするだけだった。
 その様子を最後まで見ていたのは、アイズただ一人。己の主神に見初められた少女に何を感じ取ったのか、はたまたただの偶然なのか。騒ぎのほとぼりが冷めた後も、本人すら知ることは無かった。

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